おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

自宅逝去で一番大事な事

終活セミナーとか葬儀相談を請け負うと「最後は自宅で死にたい」と望む人が多いことがわかります。しかし、この望みをかなえることが出来る人は、とても少ないのが現実です。1950年代までは亡くなった人の8割以上が自宅で最期を迎えていました。ところが、それ以降は病院医療が格段に進み、それに応じて自宅での逝去率が急激に下がりました。


終末期医療において「人生の最期を病院ではなく、住み慣れた自宅で迎えたい」と望む人が大多数です。近年「最期は病院で死ぬ」が当たり前の時代が変わり始めました。都道府県別にみた場合、自宅で死ねる割合が最も高いのは東京都です。東京都は在宅医療に力を入れている病院や診療所が多くあります。そのことが東京都の在宅死亡率の高さにつながっています。2019年の厚生労働省の人口動態統計の数字では、東京都在住の高齢者の中で10人に1人が、望み通りに自宅での最期を迎えることが出来ています。


すでに超高齢社会に突入している我が国です。当然、病院以外の場所で最期を迎えるケースも増えています。その兆候は2005年にピークであった病院死の減少傾向でわかります。特に大都市では終末期医療が見直され始めました。大都市以外でも、特養を含む老人介護施設での看取りも増えましたし、訪問介護の充実で自宅での逝去も増加しつつあります。


もし、ご家族が自宅で死亡した場合は、どこに連絡をして何を行ったらいいのでしょうか。医療関係者以外の素人が死亡を判断することは法律上出来ません。今まで、ご遺族からのお話しを伺っていると「どうやら死んだようだ」と思うのは次のような状況だそうです。


寝ている側で大声を出して呼び掛けても一切反応が無い。息をしている気配がしない。触ると冷たい。目を開けているのに、手を近づけても目をつむらない。手や足が曲がったままいつまでも直らない。などで気がついたそうです。こうなると、家族はパニックになります。絶対にやってはいけないのが、あわてて救急車を呼ぶことです。「死んでいる」と気がつくと、つい救急車に連絡してしまいがちです。しかし明らかに死亡している状態では、救急隊員は手をつけません。その場で警察を呼んで帰ってしまいます。死亡後に救急車を呼ぶと、その後、警察の検視となり、大ごとになるのです。


もう一つ注意点があります。それは死体を絶対に動かさないことです。いくらかかり付け医でも、ご遺体が亡くなった状態から家族が手を加えて綺麗な身体に直していると、死亡確認を断ることもあります。特に警察が介入する場合は、亡くなった人の状態をそのままにしておく必要があります。家族であっても勝手に死体に手を加えると、疑われて事情を聴取されるのです。死亡診断書か死体検案書が作成されるまでは、いくらご家族でも、ご遺体に触りたくなる気持ちをこらえてください。


自宅で大騒ぎにならずに往生したいなら、必ず「死亡診断書」を書いてもらえる準備をすることです。自宅で家族が看取るつもりなら、最初に信頼できる「かかりつけ医」を見つけておくことが必要です。そして、少しでも様子が変だと感じたら、その医師に来てもらいます。故人が24時間以内に診察や治療を受けている、かかりつけ医ならば、死亡時の状況を判断して臨終に立ち会わなくても死亡診断書を書いてくれます。たとえ生前の診察後24時間以上を経過していたとしても、老衰や持病による死亡で間違いないと確認できれば、死亡診断書をもらえます。


自宅逝去で、一番大事なのは「死亡診断書」がスムーズに発行されることなのです。

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