おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

残された土地は揉め事に

葬儀屋は地場産業です。市内を回ると過去に弊社でお葬式をあげられたお家に気がつきます。その中で大きな家だったとか、お庭が広く土地が広いなと感じたお家が、いつの間にか空き地になっていたり、細かく分譲されて小さな家が数件建っていたりすることに気がつきます。


家と土地を持つ家人が亡くなると、通常は次の代に相続されます。しかし相続が揉めると故人が保有していた家と土地は相続人全員で引き継ぐこととなります。土地を相続人全員で共有することなれば、結局売却され空き地や細かい宅地になります。


故人に数人の子供あり、特定の1人に家と土地を相続させるには遺言書が使われます。その内容にしたがって土地を引き継ぐこととなりますが、遺言書がない場合はすべての相続人による遺産分割協議によって、その土地を引き継ぐ人を決めることになります。すると土地の持ち主の決定に争いごとが起こる場合が多いのです。


遺産分割協議にはすべての相続人が参加します。そしてそれぞれの配偶者やお互いの親御さんも口を出してきます。土地の相続で争いとなる原因の一つに遺留分を満たさない相続人がいる事が挙げられます。遺留分とは、法定相続人がすべての相続財産のうち最低限相続することができる割合のことをいいます。簡単に言うと子供二人が残された場合は、相続財産は半分ずつなのです。長男に家と土地を相続させるなら次男にはそれ相当の金銭を相続させないと、なかなか納得しないのです。


遺言書があればスムーズに相続が進むわけではありません。とりわけ問題になるのが、遺留分を無視した財産の分け方となっている場合です。遺留分侵害額請求は遺留分に満たない金額しか相続できなかった人の権利であり、金額が満たなかった人が遺留分侵害額請求を行えば、請求された相続人は必ず応じなければなりません。


遺留分の申し立ての他にも寄与分を主張する相続人が出て揉めるケースもあります。寄与分とは故人が亡くなる前に子供の家族が療養看護などを行うことで、相続財産の維持または増減に関与することをいいます。死ぬ前の介護を行った人は、何もしていない相続人とは権利が違うため、負担分に相当する財産を多く相続できると考えるのです。しかし他の相続人からすると、寄与によってどれだけ財産が維持できたのか、あるいは財産が変動したのかが分かりません。そのうえ、実際に寄与があったのか確認できないことも多く、寄与分を主張する相続人と寄与分を主張された他の相続人とで、主張が食い違い、大揉めになるケースも多いのです。


結局、土地を相続する場合にトラブルになることがあるのは、不動産以外に相続する財産がないと、不動産を相続しなかった相続人から不満が出ることです。土地を子供1人に相続させる場合には、それに見合った金銭財産を他の子供に譲らないと、遺産分割協議はいつまでたっても決着しません。


揉め事になった場合の最終的決着は、家と土地の売却になり空き地となります。結局、金銭で相続争いの決着をつけるしかないのが現実です。
今日も、1年前にお葬式を出したお家の後が空き地になっていました。
故人が過ごした愛着ある土地には、不動産業者の看板だけが出ていました。

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