おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

開眼供養を行いましたか

始めてのお葬式はどなたも大変な思いをされます。やっとお葬式が終わると皆様「やれやれ一段落」と思われますが、直ぐに49日法要がせまり、その間も銀行関係や土地家屋の相続の問題が持ち上がります。お葬式後もてんてこ舞いなのです。特に火葬場から持ち帰った骨箱を眺めて、皆様が改めて気がつくのが、仏壇とお墓の用意をしなければとの問題です。


この仏壇とお墓は、購入しただけでは意味をなさないことはご存じでしたか?新たにお墓を建立する時や、新しい仏壇を購入した時は「開眼供養」が必要です。「開眼」は「かいがん」ではなく「かいげん」と読みます。お性根(しょうね)入れ、入魂(にゅうこん)式、魂(たましい)入れなどと呼ぶ地方もあります。この開眼供養を行っていない仏壇は、ただの箱であり、お墓はただの石なのです。お寺様を呼び供養することで、お釈迦様の魂を入れてもらい、普通の箱や石だったものが、礼拝の対象に変わるのです。開眼という呼び方は、仏像を作る際に最後に目を描き込み、魂が宿ることから来ています。


仏具店や石材店では、初めての購入者に詳しく説明をしてくれますので、皆様「結構面倒だな」と感じながらも、行なう人が多いようです。しかしこの頃はネットで仏壇を購入する方も増えてきました。本当の仏壇にする「魂入れ」を忘れているご家庭も多いようです。


新しい仏壇を購入すると赤い和ろうそくが付いてきます。仏壇購入はおめでたいことだからです。開眼供養にお呼びするお坊様のお布施の準備も不祝儀袋や白無地の封筒ではありません。お祝い事ですから紅白結びきりの熨斗のついていない祝儀袋を用意します。表書きは開眼御礼とします。新しい仏壇やお墓は、家の新築と同様の喜ばしい出来事なのです。


仏壇の魂入れの儀式は自宅の設置する場所で行います。午前中でも午後でも問題ありませんが、仏滅の日や先勝の日の午後、先負の日の午前は避けることもあるようです。菩提寺に依頼する場合のお布施の金額は3万円から5万円というのが相場です。入れるお札は新札を用意します。魂入れ当日は礼服を着るのが一般的です。仏壇購入は慶事ですから葬式や法事のときのように黒いネクタイは着けません。通常のネクタイとスーツで大丈夫です。


お墓の建立の開眼供養は墓石の完成日に行います。生前にお墓を建てる生前墓(寿陵)についても開眼供養が必要です。供養前のお墓には白い布が巻かれています。この布をとる儀式が開眼供養です。供養を行うためには次のような準備が必要です。まずお墓の清掃を行います。お清めの準備として祭壇やお供え物をします。地域によっては両隣のお墓へも、お供えすることがあります。故人の戒名などの石彫りをしていないときは、供養の日までに石彫りをしてもらうように石材店に手配をしておきます。お寺が来てからの流れは、仏壇の開眼法要と同じ流れになります。


同じ仏教でも浄土真宗は仏壇やお墓に仏の魂が宿るという考え方をしません。そのため浄土真宗では開眼供養はせず、御移徙(おわたまし)や建碑式入仏法要と呼ぶ供養を行います。


開眼供養は慶事なので、主催者の方に「おめでとうございます」とお祝いの挨拶をします。


近頃は、ビルの中の納骨堂や樹木葬、そして散骨で墓石が無くなり、ニトリやアマゾンで仏壇を購入する時代です。このような開眼供養の儀式が無くなる日も近いかもしれません。

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