おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

お葬式に着ていく服装は

葬儀会館の参列者の服装は、黒一色に染まります。お葬式は黒い服を着るのが常識だと思っています。しかし戦前までは喪服の色は白色でした。そして喪服の着用は遺族のみに限られていたようです。戦後欧米の影響で黒色のものを着用するようになり、いつのまに参列者も喪服を着用するマナーになりました。


故人と最期のお別れをする大事な儀式がお葬式です。ご遺族は喪に服し、参列者は故人と遺族に対して失礼にならないように服装を整えます。現在は、喪主や親族は略式喪服としてブラックスーツの着用が主流になっていますが、本来は三親等までの親族は、正式喪服を着用するのが習慣でした。


正式喪服の場合、男性の和装なら黒紋付きの羽織袴になります、しかし着物は高齢者以外には、すっかり見なくなりました。たまに若年層が和装で来られると、もしかして「怖い方」と誤解されることもあるようです。洋装ならモーニングが正式喪服です。


女性はまだまだ和装喪服が人気です。特にご主人を送るときには、絶対に黒無地着物を着ると決めている奥様も多くおられます。喪服の未亡人姿は憧れのようです。染め抜き紋を五つ付けた黒無地の着物が弔事の礼装です。
洋装なら黒を基調としたアフタヌーンドレスやアンサンブルなどになります。


参列者の男性は、黒のフォーマルスーツで白いワイシャツを着用します。ネクタイは黒無地にし、タイピンはつけません。ベルト、靴下、靴などの小物類も黒に統一します。


女性の参列者の服装は、黒のワンピースかスーツで肌を露出させないものが基本です。服やバッグ、靴などは、光沢の無い素材のものを選びます。色が黒であっても、革や毛皮のコートは「殺生」をイメージさせるため、身につけないでください。結婚指輪以外は外します。特に金の指輪は不可です。イヤリングやピアスなどは、余計な装飾と受け取られかねないため、装着しない方が無難です。唯一許されるアクセサリーは、真珠のネックレスです。


エナメルや金具などの光沢のある靴は避けてください。黒色でストレートチップと呼ばれる紐靴が一番フォーマルです。ローファーはカジュアルなイメージがあり避けたほうが無難です。ミュールやサンダルなどと、スエードなどの靴はカジュアルなイメージがあり、避けたほうが無難です。またパンプスは固い床を歩くと結構、音が響きますから歩く時の配慮も必要です。


靴でご注意して欲しいことがあります。靴箱から久しぶりに冠婚葬祭用の革靴を引っ張り出します。何年振りかで出した革靴は、見た目は変わりないように見えますが、経年劣化で、靴底はボロボロです、葬儀会館に着くまでは、なんとか壊れずに来たのですが、ご焼香に踏み出したとたんに、靴底がベリッと全部剥がれてしまう方や、ソールが砕け散って転々と黒いゴム跡を床につける方が出てきます。葬儀参列者の中で毎回一人は片ちんばで、歩きにくそうに帰る方を見つけます。


喪服を用意するという行為は家族の死の準備と考えてなかなか踏み出せない方もおられます。しかしお葬式は急に起きますし、喪服の準備がすぐにできない場合も出てきます。
お葬式を大事な儀式と捉える風潮がある限り、まだ正式喪服は必要だと思います。

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