おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

キリスト教式は素敵です

キリスト教のご葬儀のお手伝いを終えました。キリスト教にはカトリックとプロテスタントがあります。聖職者の呼び方も、神父様、牧師様と違います。信者の葬儀はミサに通っている教会を使われることが多いのですが、今回は、お付き合いのある教会が遠方とのことで、私共の葬儀会館を使用されました。


キリスト式の葬儀依頼が入ると、会館では最初にすることがあります。室内の抹香の匂いを消すことです。ホールの換気を行い、業務用の空気清浄機を回します。


今回のプロテスタントの信者の儀式では、仏教の通夜にあたる前夜式を行いました。最初に納棺式を行い、牧師様が故人の枕元で祈りを捧げた後に、遺族の手で棺に納めます。故人のお気に入りのガウンを着せました。周りを白い花で埋めて蓋をし上から黒い布で覆います。遺影は棺の左右どちらかに立てます。正面中央に生花で作った十字架を飾り、その下に聖餐台と講壇を置きます。


前夜式では、棺を安置した周りに、遺族、近親者、友人が集まって、牧師様の宣言で始まります。故人が生前好きだった賛美歌の斉唱、聖書朗読に続いて、牧師様が主の祈りを捧げて、聖書の朗読、祈祷があり、賛美歌が歌われました。


翌日が一般参列者の来る葬儀・告別式になります。一般会葬者は、葬儀と言えば仏式だと思ってくる方も多く、手に数珠をかけたまま式場に入られるのを見つけると、そっと耳元で
 「本日はキリスト式ですから、お数珠はしまってください」と声をかけ、
祭壇前で手を合わせ、合掌をしようとする方に、献花を渡しながら、そっと
 「黙祷をお願いします」と声掛けをします。


献花の手順は、最初に両手で花を受け取った後、遺族に一礼して献花台に進みます。次に右手で花側を持ち、左手で茎を持ち。90度回して茎を祭壇に向け献花台に捧げます。 一礼して黙祷します。前を向いたまま数歩下がり、遺族に一礼して戻ります。


キリスト教式の特徴である賛美歌ですが、強制的に参加しなければいけないというものではありません。聞いているだけの参列者もいますが、事前に歌や祈りの一節が書かれた紙が配られますので、できるだけ参加してみてください。


お悔やみの言葉は不要です。 キリスト教は死に対する考え方が仏教とは違い、永遠の命の始まりだとされています。そのため、亡くなったことは悲しいことですが、不幸なことではないという意識があります。「安らかな眠りをお祈りいたします」のように、故人の安寧を祈る形が一般的です。


牧師様が故人に「兄弟」と話しかけ「永遠の命の始まり」と、お話を始め、故人の人生の歩みを、丁寧に紹介していきます。次に友人たちが故人との思い出を語ります。最後に遺族が「先に天国に行って、私達を待っていてください」 と語りかけ、お花で埋めたお棺を送り出しました。


葬儀屋が、特定の宗教を批判する事は許されませんが、個人的には、素敵な雰囲気を感じていました。お寺様が進行する仏式葬儀には感じられない、微笑ましい葬儀式だったと思い出しています。

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