おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

幸せをつかむのは難しい

「他の人に比べて、私はなんて不幸なのだ」と嘆く方がおられます。


仏教では幸せになれない理由は、悪い行いをしているせいだと説いています。
不幸や悪い結果を生み出す、やってはいけない行動が10種類も我々にはあるのです。


まず身体から出てくる3種類の悪があります。次に口から出てくる4種類の悪もあります。
最後に心から出てくる3種類の悪があります。
これらをお釈迦様は「身三口四意三」(シンサン クシ イサン)と唱えました。
そして合計10種類の代表的な悪行を絶対に行わないようにと、戒律を設けました。


身体が起こす悪行には、殺生(せっしょう)偸盗(ちゅうとう)邪淫(じゃいん)
があります。 
殺生とは生きもの生命を奪うことです。故意に命を絶つのはいけないと説きます。
偸盗とは他人の財物を自分のものにすることです。窃盗のことを言います。
邪婬とは道徳に外れた男女の交わりのことです。不倫を諫めます。


口が起こす悪行には、妄語(もうご)綺語(きご)両舌(りょうぜつ)悪口(あっく)
があります。言葉遣いは難しいので口に関する事が4種類と多いのです。
妄語とは嘘をつくことです。嘘をつく動機はまちまちですが、多くの場合、自分の失敗をごまかすために口にしてしまいます。
綺語とは心にもないお世辞を言うことです。お世辞を言うのは、相手のためというよりも、自分が気に入られたいからです。
両舌とは二枚舌とも言います。人の間を裂いて、仲たがいさせることを言うのです。やきもちを焼いて、二人の間に亀裂が入ることを言ってしまうのです。
悪口とは他人を傷つける言葉のことです。陰口、中傷とも言います。気に入らない相手に、ことさらに悪いところを見つけ出して、非難します。


意とは心のことです。意が起こす悪行は貪欲(どんよく) 瞋恚(しんに)邪見(じゃけん) があります。 
貪欲とは底の知れない欲の心のことです。お金が欲しい、物が欲しい、褒められたい、認められたいという欲には際限がありません。
瞋恚とは怒りの心です。あいつのせいで恥かかされたと、損をしたなどと、欲が妨げられると、怒りの心が燃え上がります。
邪見とは、ねたみや恨みの心をいいます。自分よりも優れている人をねたみ、不幸は他人のせいだと恨む心が生まれます。


この10種を聞いて、どこかで聞いたような記憶がある方も出てきます。映画にもなった 「モーセの十戒」に似通っているのです。殺人をしてはいけない。姦淫をしてはいけない。盗んではいけない。偽証してはいけない。財産をむさぼってはいけないなど、世の東西を問わず、人の道を説く言葉は同じになります。


自分の身体と口と心の姿をよく見つめて生きなさいと、お釈迦様は教えています。


しかし、長い人生を過ごしてきていると、3つか4つは身に覚えがあります。
棺桶に入るときに「幸せな人生だった」と言えるには、まだまだ未熟な私です。

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