自宅安置の方法教えます
病院に伺い、ストレッチャーにご遺体を乗せて、最初にする質問があります。
葬儀会館へ運ぶか、ご自宅へ安置するか、の選択です。
自宅がアパートやマンションなどで搬入が難しいとか、周りの住民に知られたくない等の 理由で、葬儀屋の冷蔵庫に運んでくれと懇願される方も多いのです。
しかし、大半の家族は長期の入院や老人ホームで息を引き取った故人を、もう一度、自宅に戻してあげたいと願います。ご自宅にご遺体を安置する一番のメリットは、ご家族や弔問に訪れた方が亡くなった方に寄り添う時間を持てることです。
昔は仏壇の前とか畳の部屋へと言われていましたが、今の住居は安置が出来る部屋探しに 苦労します。お家に着くと家族全員でタンスや机、椅子を運び出すことも度々あります。やっと場所を作ると布団を敷きます。布団は生前に使っていたものでかまいません。
ベッドでも問題ありません。新しい布団を用意されようとしますが、あえて使用済みの布団と軽い薄がけにしてくださいと伝えます。葬儀の後で、布団の処分を相談されるのです。
いくら家族でも死体が寝ていた布団を、その後、家族が使うのはためらうのです。
大型ごみで処分できますと答えますが、最初から、葬儀屋に安置用の布団セットを頼むのも、後々便利です。
北枕と言われますが、この頃は口にしなくなりました。住宅事情により、それが無理な場合が出てきますので、動かしやすい向きに寝かせます。
お身体を点検し、身体の穴に体液が漏れ出さないように綿を詰めます。耳、鼻、口、肛門、女性のもう一つには触りません。下半身に紙おむつを履かせます。よくテレビ番組では死人の鼻の穴に白い綿が詰まっているシーンが映ります。実際は細い棒を使い、鼻の奥まで押し込みますので見えません。鼻穴から白い綿が見えているのはテレビの世界だけです。
乾いたお顔に油分の多いローションをぬり、唇に紅を指します。女性にはいつも使用していた口紅を借ります。違う色の口紅を使うと、お顔の印象が違って見えるのです。男性にも、ピンクの紅を指すと、眠っているように見えてきます。
ドライアイスを入れます。 ドライアイスは、腐敗してくる胸と下半身に置きます
両手を胸元で合掌させて数珠をもたせ、薄い布団をかけます。顔に白い布をかぶせ、布団の上に魔除けの守り刀を置きます。魔物を払い故人が死後の世界へ無事にたどり着けるようにという意味です。守り刀は葬儀専用の模造品などを用いますが、自宅にあるナイフやカミソリといった刃物も使えます。
ご遺体の枕元には、小さな机に白い布をかけた祭壇を設けます。そこに香炉・蝋燭・水をいれたコップ・花立て・一膳飯をお供えし、家族が布団の周りに集まります。
「やっと帰れたね、おつかれさま、おかえりなさい」
家族が口々にご遺体に呼びかけます。この時間を作るために葬儀屋は働きます。