クリスマスの日の想いで
本日はクリスマスです。この日を迎えると思い出すお葬式があります。この「おくりびとの日記」を綴るきっかけになった出会いでした。「クリスマスまではどうしても生きていたい」と願いながら旅立った仏様がいました。過去ブログにも載せましたが、皆様にもう一度お伝えしたくなり再掲載させて頂きます。
打ち合わせの時に「納棺式で納めたい服や持たせたい品物がありましたら、枕元の並べて置いてください」と伝えます。棺桶を積み込みご自宅に伺いました。仏様の枕元に一緒に納める品が置いてあります。「この衣装を入れてください」こう言って奥様が差し出した服は、真っ赤な服地に白い縁取りのジャケットとズボン、皮の太いベルト、ボンボンのついた帽子、白い毛で縁取られた長靴、そしてボリュームのある白い付け髭、そうです、本格的なサンタクロースの衣装です。 いままで、いろいろな品物を仏様に持たせてきましたが、さすがにサンタの衣装は初めてでした。 半分ビックリして「これ、どうしたのですか?」
「ボランティアとして保育園のクリスマス会でサンタクロースになるのが恒例でした。毎年、子供達と過ごす時間をとても楽しみにしていました。末期の肺癌で余命宣告をされても『子供たちが待っている、今年も行くぞ』と指折り数えていました。もうすぐでしたが、とうとう力が尽きてしまいました」
奥様が、残念そうに話してくれました。仏様が召している白装束の上に、赤いサンタの洋服を着せかけ、お髭も顔の傍に置き、純白のお布団をかけて棺の蓋を閉めました。 会葬御礼の挨拶が始まりました。
「定年後も趣味やボランティア活動で忙しい父でした。退院して毎年恒例のサンタになると言っていたのですが、残念です」 喪主を務めた息子さんの出棺前の挨拶が終わるころ、保母さんに連れてこられた10人ほどの保育園児がやってきました。 異様な雰囲気と見慣れない遺影写真に、保育園児たちが戸惑っています。お別れで一本ずつの白菊を持った保育園児たちが棺に近づいてきました。奥様と目配せを交わした私は、そっと仏様のお布団をめくり赤い衣裳を見せ、あごに付け髭をあててあげました。
「あ、サンタや」「サンタクロースのおじいさんだ」「去年、きてくれたよ」「プレゼント、もらったことあるよ」 叫び始めた子供達を、保母さんは気を使って外に連れ出し始めます。 霊柩車のホーンが、お別れを告げます。 ゆっくり走り出した霊柩車に向って、園児たちの声が追っかけました。
「サンタさ―ん。また きてね―」
初七日のご挨拶に線香とローソクを持って伺いました。少しずつ悲しみから癒えているように見える奥様がポツリポツリとお話してくれました。
「毎年、夫がサンタクロースの衣装でプレゼントを届けていた保育園に、行くことが叶わなくなってしまいましたので、今年から止めてしまおうかと思っていたのですが」お話は続きます。「考え直して、私が届けることにしました。子供達が『サンタさんが何で来ないの』と聞くのです。困ってしまってこう答えました。サンタさんはお星さまになったの。でも、お星さまになったサンタさんは、みんなを見ているから、これからもプレゼントは届くからね」薄暮の空に子供たちの声が響きます。
「サンタさ―ん。また きてね―」