終の棲家を売って欲しい
配偶者のお葬式を済ました高齢者の住み家に、何所で聞き込んだか不思議ですが、突然不動産業者が「家を売りませんか?」と訪ねて来ると聞いています。高齢者を狙う持ち家の「押し買い被害」が急激に増えていて日弁連から被害者の会対策を求める声も上がっているようです。押し買いと言うのは、突然家に押しかけてきた業者に「あなたの家を買いたい」と強引に勧誘され、結果的に安く買いたたかれる事件です。特に「リースバック」という仕組みを悪用するケースが増えています。自宅を売っても同時に賃貸契約をすると同じ家に住み続けることができる仕組みです。売却益でまとまったお金が入りますし、固定資産税の支払いもなくなる、というメリットがあります。高齢者のおひとり様が、老人ホームの入居に必要なお金を用意した上で、決まるまでの間、比較的短い期間賃貸で住み続けるといった利用の仕方もありますが、近頃の案件の中には悪用されるケースが多発しているのです。
あるお婆ちゃんはしつこい勧誘を受けてリースバックでマンションを売って1500万円受け取りました。月12万円の家賃を払って「死ぬまでずっと住み続けられる」と言われて契約したのです。しかし最近事業者が変わり「賃貸の期限を決めていないので今月中に退去してほしい」と言われ路頭に迷うことになりました。
あるお爺ちゃんは突然訪ねてきた不動産業者から朝から晩まで12時間も「自宅マンションを1200万円で売ってほしい。家賃を払えばそのまま住み続けられる」と、しつこく勧誘されました。しかたなく契約書にサインをしてしまったのです。その後、親族に「よく考えた方がいい」と言われ「解約したい」と連絡したところ、手続きの手付金は一切戻らず加えて法外な違約金も払うよう言われました。
リースバックの問題点は普通に家を売る時の相場から60%から70%程度の価格になります。高齢者の判断能力の衰えにつけ込みはるかに安く買いたたかれるのです。そして高い賃料を設定され数年で家賃が払えなくなるケースが多いのです。多くの高齢者は契約の書類をもらっていないとか、契約した経緯もよく覚えていないなどで、問題が解決しないケースが多くなり、結果的に泣き寝入りになります。
通販などの購入には「クーリング・オフ」と呼ぶ解約制度があります。しかしこの押し買いはクーリング・オフが出来ません。法律で不動産を買う場合は8日以内であれば無条件で契約を解除できる制度があります。ところが不動産を売る場合はクーリング・オフの制度が使えません。契約を解除する場合は手付金を2倍にして事業者に返す手付倍返しという方法とか、あるいは違約金が決められている場合は払う方法しかないのです。そのような内容を事前に説明しない事業者も多いのです。
リースバックに関するトラブルのおよそ75%が70歳以上です。被害にあった事に気が付いてないとか自分が悪かったとあきらめる高齢者も増えています。土地やマンションの値上がりを背景に高値での転売を狙ってリースバックに参入する事業者が多くなっています。当然トラブルも増大しています。
葬儀後におひとり様になった身寄りのない高齢者リストが出回っているとも聞いています。高齢者が狙われるのは「オレオレ詐欺」だけではありません。高齢のおひとり様が終の棲家を追い出されないように、自身は及ばず周りの人達も気をつけてくださいね。