葬式は大変な作業ですよ
高齢で介護施設に入っていたお父様を、無事に送り出した娘さんが四十九日法要も済み、一連の流れを想い出すように話し始めました。「お葬式って大変な作業の連続なのですね。葬儀屋さんのおかげで何事もなく済ませられました。本当にありがとうございました」こう言って貰える時が葬儀屋として「至福」の時です。
お葬式の準備は病院からの電話で始まります。最期の面会の時には、ベッドのお父様は意識がありませんでした。ゼーゼーという下顎呼吸が始まっています。看護師さんから「この呼吸は努力呼吸といって終末期のものなのです。いつ連絡が来ても良いよう待機してください」と宣告されて一晩中眠れずに過ごしました。翌朝、病院から「脈拍が30を切ったのですぐに来て欲しい、間に合わない場合もあるが了承して欲しい」と電話がありました。慌てて向かったが間に合いませんでした。ただ苦しんだ様子はなく眠ったまま逝ったようです。病室で亡骸と対面の後、看護師さんから「どこか決めている葬儀社さんがあるなら、すぐに連絡をしてください。なるべく早く運び出してください」と伝えられ、怒涛の時間が始まりました。「もし決まっていない場合は病院のお抱えの葬儀社さんを紹介します」とも言われました。しかし知らない葬儀屋は不安なので随分前に親戚のお葬式の時に行ったことがあり施設の様子を覚えていて土地勘のある弊社に決めて搬送の電話をかけました。
ご自宅に運んでから、担当者に「どの様なお葬式になさいますか?」と聞かれても簡素に家族葬で済ますのか、母が言う通り『お葬式だけはしみったれたものではなく派手にやってほしい』との希望をと通すかで悩み、結局、認知の入ってきた母親の意見は取り入れず、自分と妹で葬儀の内容についての打ち合わせを始めました。
菩提寺があるのでご住職のスケジュールが合うか確認しなければいけないのですが電話をすると「夕方まで病院へ行っていて連絡が付かない」と言われなかなか日程が決まりません。その間に内容を決めようとカタログを見ても、いろんなものがピンからキリまであるために迷い始めます。祭壇一つにしても白木のものや、生花を飾り付けたものがあるし、横に並ぶ供花も多種多用で困惑するばかり。霊柩車や火葬場の火葬炉迄ランクの違いがあり、あらためてお葬式の大変にため息がでます。
お寺に支払うお布施も葬儀屋に相場を聞くと「最低で20万円」と言われて思ってもいなかった金額に驚きました。やっと日程が決まり親戚に連絡をと考えました。母方は少ないが父方の兄弟は全部で10人以上いて、それぞれに電話をしなくてはいけないのに気がつき連絡先をまとめてなかった事を悔やみながら始めます。しかし不在で連絡がつかない所もあり大変な作業になりました。人数が決まらないと通夜振る舞いの料理や精進落としの料理の人数が決定できません。結局バタバタで最後まで出席の人数が把握できないままお葬式に突入していきます。
その後も銀行へ行きお布施用のピン札を用意するとか、自分の身体が育ってしまい、慌てて喪服を購入するとか、つくづくお葬式は大変な作業と実感しましたと一連の流れを思い出しながら話されました。
「確かに、初めてのお葬式は困惑するご家族が多いのです、そのために葬儀屋の担当者がいますから遠慮なく聞いてください。実は本当に大変なのはこれからの諸手続です。役所関係、銀行関係、保険関係と待っています。相続には相続人全員の捺印が必要になります」と釘をさして、お宅を御いとましました。