白チャンチャンコは何歳
納棺式を始めるので喪家様のご自宅へ伺いました。納棺の前に「なにか、仏様に持たせたいものが有りましたらご用意をお願いします」と伝えてあります。枕元に「白いチャンチャンコ」が置いてありました。お顔の白い布をソッとめくると、優しい笑顔のお婆ちゃんがお休みなられていました。「白寿の着物ですね」と話しかけました。「あと数日で99歳の誕生日でした。家族で盛大にお祝いをしてこのチャンチャンコを着せてあげたかったのに」残念そうに喪主様が答えました。
皆様がマスコミの情報としてご存じなのは、還暦の時に赤いチャンチャンコを着る場面です。このチャンチャンコと名付けられた着物は長寿のお祝いの際に着用される羽織物の事です。色によってお祝いする年齢が異なります。よく知られているのが、還暦(60歳)の時に着る赤色のチャンチャンコです。60年で暦が戻ることから「こよみがかえる」で「還暦」と呼ばれています。還暦のお祝いは「干支が一回りして赤ちゃんに還る」「これからの厄除け」の意味合いから、赤色が選ばれました。
中国唐の詩人の杜甫(とほ)の詩にある「人生七十古来稀なり」が由来の古希(70歳)になると基本的に紫色のチャンチャンコを着せてお祝いします。紫は高位を表す色とされたのが由来です。喜寿(77歳)も古希同様気品や風格を備えた色として紫色が使われます。希の文字が草書体で書くと七十七と読めるところから来たものです。
傘寿(80歳)になると基本的に金茶色とか黄色のチャンチャンコを贈ってお祝いします。地域によっては紫色で祝う場合もあります。米寿(88歳)も黄色の物を贈ってお祝いします。米の字の由来、実る稲穂の色からの連想と言われています。傘の文字の略字を分解すると「八十八」となることから名付けられました。
卒寿(90歳)の祝いに今一度紫色の着物を贈って喜びます。長寿祝いでもっとも多く使用されているが紫色です。「卒」の字の略字は九十と読めるからきています。
白寿(99歳)は百の字から「一」を引く数字です。100-1=99の字のごとく白色がお祝いの色となります。今回のお婆ちゃんに着せたかったチャンチャンコの色でした。百寿(100歳)になると桃色です。百寿は「ひゃくじゅ」「ももじゅ」とも読め、桃色かピンク色でお祝いをします。他に一世紀を表す「紀寿」ともいいます。
前述の他にも81歳の「半寿」、108歳の「茶寿」、111歳の「皇寿」、120歳の「大還暦」などと名付けた言う長寿祝いもあります。一番新しい名称は2002年に日本百貨店協会によって提唱された66歳の「緑寿」ろくじゅ、というものもあります。
120歳の大還暦は60歳×2。人生2回目の還暦という意味から大が付いて大還暦となります。ちなみに戸籍や教会記録など信頼される記録が残っているもので、ギネス世界記録に公認された事例においては、大還暦を迎えた人は世界で一人だけです。
納棺式の最期に用意された「白いチャンチャンコ」をご遺体に着せてあげました。白くなったお婆ちゃんのお顔が少しだけホコロビました。白寿の仏様に合掌。