亡くなった夜に熟睡した
打ち合わせを始めています。自宅で介護していたお婆ちゃんが往生なさいました。喪主を努める娘さんが、心にわだかまっていただろう思いの丈を吐き出しました。「亡くなった日の夜に、こんな日に『眠れるだろうか』と思いながらベッドに入りました」寝て良いか悩みながらも、翌日のお葬式に備えてベッドに入ったそうです。
「それが、不謹慎なくらいグッスリと熟睡できたのよ。本当は仏様の横で一晩中お線香守りをしなければいけないと思っていたのに。母との思い出を一晩中思い出す時間だと思っていたのに。いつの間にか、グッスリと熟睡し、気がついたら翌朝でスッキリと目覚めた。そういえば、介護中はあまり寝られていなかったことに改めて気付いた。亡くなった母には悪かったと反省しているが、許してくれますよね」
「良く寝ているお嬢さんを、天井から見ていたお母様は嬉しかったと思いますよ」
自宅で看取ることはご家族にとって大変な労力が必要です。日々弱る高齢者の介護をするご家族は、心労と疲労困憊で倒れる方も多くいます。それだけ毎日毎晩、気を張って、死に行くお母さんの様子を見ていたのは大変な日々だったと推測できます。そしてこれからの、お通夜やお葬式などの心配や準備も心を傷つけます。もう彼女のお身体は限界を迎えていたのかもしれません。大変な中、一晩ゆっくり休めたようで本当に良かったと思いました。これで、喪主としてお葬式もしっかり乗り切れるはずです。そして、ある程度の行事が終わり、少し落ち着いた後にいろいろな思いが込み上がってくるはずです。早く日常に戻って、穏やかな日が過ごせる日が来るようにと思いつつ打ち合わせを終わらせました。
亡くなったタイミングでその後の葬儀日程は決まります。多くのケースは、息を引き取った時刻が深夜11時から夜中2時頃の場合です。深夜に葬儀屋に連絡をして遺体を自宅に移送し火葬場やお寺様などの都合が合えばその日の夕方にお通夜そして翌日が告別式と火葬という最短スケジュールも可能です。しかし故人と最期の時間をゆっくりと過ごしたいと願う方には、亡くなった当日は親族だけで仮通夜を行って、翌日にお通夜、翌々日に葬儀と火葬を行うという流れをお勧めしています。
午前3時〜5時頃の明け方にお亡くなりになったケースですと亡骸の搬送が終わると午前中に葬儀屋との打ち合わせなります。早朝にお亡くなりになった場合は特別な理由がない限りは同日の夕方からお通夜を行うケースはほとんどありません。
日程の決定には、まずは火葬場の空き状況を確認して火葬炉の手配が必要です。火葬場は地域によって先着順や予約制となっています。死者が多くでる市町村では順番待ちで数日待たなければならない施設も多くなりました。火葬炉の時間も火葬が終わって、法要と精進落としの時間が取れる時間帯に希望が集まります。他にも希望日でも、火葬場自体が友引でお休みの場合や、年末年始にかかると公共施設ですから休業になります。近年は火葬炉の老朽化により、一日に火葬できる亡骸の数が決められていて一定数以上は不可能な施設も出てきました。
しかし、お亡くなりになった直後はお通夜の日程を考えるよりも、まずは故人様の側に寄り添ってご家族と一緒に悲しみを分かち合う時間が大切です。旅立つ人に、生前の感謝を伝え、心の整理がついてからお通夜の日程を考えても問題ありません。