樹木葬納骨の問題を探る
初めてのお葬式を無事に済ませ、四十九日の法要が近づく頃、喪主様とご家族を悩ます問題に気がつく方も多いのです。それは「このご遺骨をどうしたらよいか」です。先祖代々のお墓があるので、そこに納骨をすると決まっている方は幸せです。核家族化が進み「お墓が無い」と嘆く喪家様が多く出てきました。ご遺骨を前にすると墓地やお墓の建立を考え始めます。しかし株式会社鎌倉新書2024年お墓の全国実態調査によると、お墓の平均購入金額は149万5000円になると発表されています。初めてお墓を立てる事は、お葬式同様、大きな散財になると気がつくのです。
テレビ番組や雑誌などで「終活」について取り上げられる際に「樹木葬」という言葉を耳にされたことがある人も多いと思います。名前から「森の中で大きな樹の下に埋葬される」等の漠然とした印象を持つ人も多いのです。樹木葬とは「墓地埋葬等に関する法律」に従って許可を得た区画(墓地)に遺骨を埋葬し、墓石の代わりに樹木を墓標とするお墓の形式です。
近年安価な納骨方法として人気が出始めました。 日本で初めて樹木葬を実施したのは1999年岩手県一関市の「知勝院」といわれています。自然回帰の考え方や跡継ぎが不要な手続きに、首都圏を中心とした都市を始めとして注目され、瞬く間に日本全国で樹木葬が実施されるようになりました。 樹木葬が人気になる理由は、墓石の代わりに樹木をシンボルとするお墓だからです。一基何十万という高価な墓石の購入費用がいりません。基本的に後継ぎを必要としない永代供養(えいだいくよう)で受け入れられます。そのため、お一人様や、お子様のいないご夫婦などが利用するケースが多いのです。
話題を集めている樹木葬ですが、今までの公園墓地に比べるとやはりデメリットも出てきます。多くは墓標となる樹木(シンボルツリー)を1本植えて、その周囲にご遺骨を埋葬するスタイルです。どうしても立地が人里から離れた場所になり、霊園までの交通の便やアクセスが良くありません。特に山林の中にある樹木葬の霊園ですと公共交通機関が、ほとんどありません。こうなると高齢者になり自家用車の運転や歩行が困難になると、簡単にお参りに行けなくなる可能性も出てきます。
樹木葬の霊園はお供えや線香やローソクなどの使用が禁止されている場所も少なくありません。山林や緑の多い場所のため火気厳禁なのです。お供えは野生動物を引き寄せてしまうといった理由から禁止されています。必ず持ち帰ってください。
お墓が並ぶ管理墓地に比べて樹木葬の立地は管理が行き届いておらず、景観が悪くなってしまう土地も多いのです。特にシンボルツリーが枯れてしまった場合は新たに植樹が必要ですが、資金面などの理由でそのままにされる場合もあるようです。
一般の墓石を立てるお墓と比べると、樹木葬にはまだまだ認知度が低いのが現状です。納骨時に周りの親戚の理解を得られないといったケースも多くみられます。身内や親戚が「お墓は墓石で建立して代々引き継ぐもの」という考えが強い場合は、樹木葬に反対される可能性も出てくるのです。樹木葬は一般的なお墓と形式が異なります。自身やご家族が十分に納得されてから購入して納骨に進んでください。