おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

理不尽な文句が多くなる

同業者が集まる会合で話し合いに出る題材があります。それは「理不尽な文句を言うクレーマーが増えている」です。カスタマーハラスメントと言う言葉もマスコミが取り上げています。無事にお葬式が終わりご挨拶と共に恐る恐る請求書を渡します。合計金額を確認した喪主様から、問題なくすんなりと現金が出てくるまでが葬儀屋の勝負です。クレームのひと言もなく全額回収できた時は心底ホッとします。


「ボッタクリなどのやましい内容が無ければ、ビクつくことは無いのに」と思われるかもしれません。ところが聞かされるクレームは葬儀屋の事だけではないのです。結構、多く言われるのが、お寺様やお布施の金額に納得がいかない人の文句です。これはお寺やお坊様個人の問題点が多いのです。葬儀屋としては出来るだけ関わりたくないクレームです。一応、間に入り解決するように努力はしますが「金額に不満の場合は最終的にお坊様と直接お話しください」と逃げる事もあります。


食事についてもクレームの対象になりがちです。鎌倉新書のアンケートによると、13.4%が「食事が期待通りの内容でなかった」、13.2%が「金額に中身が見合っていなかった」と回答しています。内容やメニューについて文句が出ているのです。


参列者全員で行なうお葬式の会食は大切な目的があります。ご遺族やご親族そして引導を渡したお坊様が故人と共に過ごす供養の場だからです。そして弔問に来てくれた人々に感謝と共にお礼をする場なのです。


当然、忌中ですから魚や肉を食べずに「精進料理」を食べるのが一般的な風習でした。四十九日法要までは故人が無事に浄土に行けるように、殺生をしない料理で我慢していたのです。又、どうしても出席者の割合が高齢者の比率の多い席になりがちです。歯ごたえのある食材とか、油が多く使われた料理とか、濃い味付けなどは避けられます。お坊様も参列されるのでどうしても野菜料理が中心となるメニューが考えだされて提供されています。ところが「お膳の内容にボリュームが無かった」「生きの良いお刺身を付けろ」「肉料理がついていなかった」「ステーキが食べたい」「精のつく料理を出せ」など理不尽と思えるクレームも多くあります。

家族葬の場合「子供料理が欲しい」「うちの子はハンバーガーしか食べない」「ピザを取れ」「ウーバイーツで注文しろ」「コンビニから出前を頼め」「炊き立てご飯でないと家族が可哀想だ」まだまだ出ます。もちろんサービス業として食事の重要性は理解しています。しかし、ここは一流料亭ではありませんので、出来ることは限られてきます。あくまでもお清め供養の食事の席ですから、あまり無理な注文をされても対応は不可能なのです。


ここは葬儀会館です。一流の宿でも高級ホテルでもありません。一応お通夜のお線香守りの為の仮の宿泊施設はありますが、そこでも「お風呂に高級アメニティを揃えろ」「貸出布団では熟睡できないのでベッドを用意しろ」「有線のテレビ番組が見たい」などのカスタマーハラスメントが続きます。今回の主役は亡くなった故人です。お葬式の為に集まった参列者は、少々の不都合は目をつむって欲しいのです。


葬儀屋は、故人様への供養を一番に考え、ご遺族の想いを叶えて実現するため、故人様の人柄を丁寧に伺い、ご遺族の望まれるお葬式となるよう全力で取り組みます。

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