おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

お坊様はミュージシャン

お葬式でお坊様が御経を読むときに、傍らで音を出しているのが、鐘(かね)と木魚(もくぎょ)です。鐘は合図を知らせる鳴り物として、木魚は御経を読むときのリズムを整える鳴り物 として使われる仏具です。


ホールに響く、張りのある声で読まれる御経にかぶさるように聞こえてくる木魚のポクポクの音色で、故人を偲ぶ時間が過ぎていきます。
高齢者が大往生の時には、極楽の旅路を後押しするようにポクポクと軽く聞こえます。
反対に、寿命には程遠い若い方が亡くなった時の木魚の音色は、ボンボンと聞こえる気がします。まるで残された方の悲しみを癒し、なるべく早く元気が出るようにと鼓舞するように感じます。


この木魚を叩く本当の意味をご存じですか?
お坊様が御経を唱えながら叩くものですから、とても神聖な意味合いをもった音色のように思えますが、実は単なる眠気覚ましとして叩かれていたのです。


たしかに御経を長い時間聞いているとついウトウトしてしまうことがあります。
いくら修行を積んだお坊様でも同じように眠気を感じます。
木魚が誕生した頃は、お寺で御経の時に眠ってしまうお坊様や修行僧が多かったようです。そこで眠気を覚ますために木魚が考え出されました。
なぜ魚の形にしたのでしょうか?
魚はずっと目を開けていることから寝ないと考えられて、魚のようにしっかりと目を開けて起きていなさい、そして修行に励みなさい、という意味が込められているのです。また、 木魚を叩くことによって煩悩が吐き出されていくという説もあります。


木魚はほとんどの宗派で使いますが、日蓮宗だけは木魚を使わず、木鐘(もくしょう)と呼ぶ、パンケーキを重ねたような形の鳴り物を使用します。音色はポクポクでは無くどちらかというとカンカンに近い乾いた音がします。日蓮宗は使う鳴り物の数が多い宗派です。太鼓(たいこ)や銅鑼(どら)なども使い、御経の間には、大きなドーンという音色がホールに響き渡ります。


この他にも錫杖(しゃくじょう)と呼ぶ6個の金属の輪が付いていてシャンシャンという音色の鳴り物や、音木(おんぎ)と呼ぶ紫檀の木で作られた小型の拍子木などがあります。


葬儀の規模によっては、唄や雅楽がつきコンサートホールのような雰囲気にもなります。


鐘だけで朗々と御経を読み上げるお坊様もいれば、お一人なのに右手で木魚を叩き左手でお鈴を叩き、なおかつ銅鑼や太鼓なども器用に使い分けリズムをとるお坊様もいらっしゃいます。その有様はまるでライブのミュージシャンです。

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