家族葬にはマナーがある
ほとんどのお葬式が家族葬の形になり始めました。ご存じの通り、参列者の少ない、ご家族と親戚だけで行なう、近しい身内のみのお葬式の形式です。昔はお葬式と言えば、ご近所、友人、会社関係と多くの弔問客が訪れる「人生で一大のイベント」とも名付けられる一般葬が多数派でした。それが、核家族世帯が増えて、ご近所のお付き合いが無くなり、結果として、身内だけで執り行う現在の形が増加しました。
株式会社鎌倉新書が2024年3月に行った「お葬式に関する全国調査」によると近年のお葬式の種類は、家族葬が50.0%、一般葬が30.1%、1日葬が10.2%、直葬・火葬式が9.6%との数字が発表されています。
家族葬の大きな特徴は参列者が限られている点です。当然、そのことによって準備が楽になりました。参列が限られた身内だけですから、弔問客の接待に気を回すことなく、ゆっくりと故人にお別れができます。また、参列者が限られているため、大きな式場を借りる必要もなく、飲食接待費などの葬儀費用も高額にならずに済みます。事前に参列者数が解かることで、葬儀屋としても準備がずいぶん楽になりました。一般葬では故人の友人や仕事関係、そしてその町内の近隣住人が参列しました。故人の交流関係によっては参列者の人数が予測できないことが多くありました。途中で会場内の椅子がすべて埋まったり、渡す供養品が足りなくなったり、通夜振る舞いの食事や飲み物が極端に不足して、ご迷惑をかけるなどが日常茶飯事でした。
利点の多い家族葬ですが、「誰に参列してもらうか」「誰に連絡をするか」「他人を呼ぶとしたらどの人を呼ぶか」などの判断がとても難しいといった側面もあります。
参列人数が制限されている家族葬ですが、お通夜が始まる前に、呼ばれていない弔問客が急に訪れるケースが結構な割合であります。高齢の親を「家族のみで送る家族葬にします」と聞いていても、突然ご近所のお年寄りが連れだって来てしまうとか、昔からの友人だと名乗る人物が急に顔を見せたなどのハプニングも多いのです。
喪服を着て受付まで来られている弔問の方を、葬儀屋が「家族のみです」と追い返すことは出来ませんから、やくなく喪主様に伝えますと「ご近所には亡くなったことを知らせたが、葬儀は家族だけで行なうと伝えてある」と言い張ります。そうなると、多分高齢のご近所さん方は家族葬の内容を理解していなくて「亡くなった時は必ずお葬式に参列する」と考えて来てしまったのです。そして、必ずと言っていいほどお香典も持参しています。ほとんどの家族葬では香典辞退です。一般の弔問客を呼ばない家族葬では香典返しや会葬御礼などが不要なのが利点なのです。
呼ばれていない人が勝手に訪れて参列を要求するのは迷惑な行為になりかねません。家族葬のマナーとして、訃報を知っても葬儀会場や葬儀日時の案内がない場合や、「参列不要」と言われた時は、家族の気持ちを尊重して参列は控えます。そしてお葬式の案内が届いても、別の知人に訃報を広めるような行為は慎みます。
呼ばれていない他人は参列を控え、香典もご挨拶も無理に行わないことが家族葬の決め事です。身内だけで静かに故人を見送りたい気持ちを大切にしてください。