おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

ハロウィンは日本のお盆

外国人から見ると日本人の宗教に対する考え方は理解が出来ないと感じるようです。世界からは宗教に無頓着な国民と言われていると聞きました。日本人の人生は、小さい頃から神社のお祭りを楽しみ、結婚式は教会で行い、安産祈願は神社で祈祷し、大晦日は除夜の鐘、お正月は初詣、2月はバレンタイン、春と秋のお彼岸にはお寺でお墓参り、年末はハロウィンとクリスマス、そしてお葬式は仏式で行います。


今年も全国がハロウィン一色に染まります。最初にハロウィンを取り扱ったのは1970年代の原宿にあったキディランド原宿店といわれています。その後1990年代から2000年代にかけて、他の会社もハロウィンに着目して多種のセールス利用が始まり、多方面にこの騒ぎが広まりました。日本人は、この日を仮装で楽しむイベント日にしてしまいました。魔女や悪魔といった定番仮装だけではなくアニメのキャラクターなどのコスプレを楽しむ人で盛り上がる大騒ぎの日にしたのです。


英語では「聖人」を「Hallows」と綴ります。そこからキリスト教のすべての聖人を記念する日として「Halloween」が始まりました。もともとは古代ケルトのお祭りです。古代ケルトでは10月31日は日本のお盆と同様に死後の世界の扉が開き、ご先祖様の霊が家族に会いに現世へ戻って来る日と言われました。ところがご先祖様だけでなく、悪霊や悪さをする精霊なども一緒に現世に来てしまい子どもをさらったり人の魂を取ったりすると怖がられました。そこで人々は仮面を被ったり化粧をしたり魔除けの焚き火を焚いて、悪さをする悪霊や精霊を驚かせて追い払っていたのです。この風習がもとになりハロウィンの日に仮装する文化が生まれました。


目・口・鼻をくり抜いて顔の形にしたかぼちゃの装飾を見ることも多いはずです。このかぼちゃには「ジャック・オー・ランタン」という名前が付いています。昔、悪さばかりしているジャックという男がハロウィンの日に魂を奪おうとする悪魔に遭遇しました。知恵の働くジャックは悪魔を騙して魂を取らないことを約束させましたが、生前の悪行がたたって天国にも行けません。死後に地獄に落ちることも天国にも行けないジャックは夜中になるとカブをくり抜いて作ったランタンに灯をともして現世をさまよい続けています。当初の材料はカブでしたが、アメリカでは生産が多かったカボチャを使うようになりました。カボチャのランタンは亡霊のジャックや悪霊たちを撃退する目的で玄関先に飾ります。


ハロウィンでは、魔女やおばけに仮装した子どもたちが、日没後に近所の家を訪問して「トリック・オア・トリート」(Trick or Treat)と唱えている風景も有名です。日本語に訳すと「お菓子をくれないといたずらするぞ」という意味です。子どもに質問された大人は「ハッピーハロウィン」と答えて、お菓子をあげます。中世ヨーロッパの時代農民がお祭り用の食材をもらい歩いた風習から生まれた行動です。悪霊にお菓子を渡して家に入って来ないようお願いするという意味もあるそうです。


この日はご先祖の霊が現世によみがえる日ですから、日本での「お盆」なのです。死者の魂だけでなく悪さをする悪霊も一緒に戻ってきますから、取りつかれないように気を付けてください。今日はハロウィンです。旅立った家族の魂が帰ってくる日ですから、仏壇に手を合わせてお墓参りに行きましょうね。

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