おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

この仕事が好きな理由は

ムラゴンの皆様はそれぞれにお仕事をお持ちだと思います。リタイアされて悠々自適の日々と言われる方も、何十年と働いた上での現在があります。「食べるためにやむなく働いている」と言う人もおられるでしょうが、ほとんどの方は、自分の仕事が好きだからとか、働き甲斐を見いだせるとか、働く仲間と過ごす時間が楽しいなどの気持ちをお持ちです。仕事を続けられるには「働き甲斐」がとても重要です。


私の仕事は葬儀屋です。何十年と続けてきた理由は、やはり仕事で受ける「ご遺族に感謝をされる」という「働き甲斐」を感じる嬉しさと言っても過言ではありません。お葬式の一連の流れを滞りなく終えた時に喪主を始めとするご遺族の皆様から「貴方のおかげで故人を無事に送ることが出来た」と言われる喜びなのです。


身近な人の突然の死去は家族にとって一番の驚愕であり心理的ストレスも大きくなります。何から手を付けたらよいのかと戸惑うご遺族に寄り添い、的確な助言を行うことも葬儀屋としての「働き甲斐」です。この仕事はデリケートな部分が多いと感じます。実際にご遺体を目の前にして、ご遺族同士が言い争ったり宗教や宗派はどうするかなどで揉めたりする事もあります。こうした中でも葬儀屋は滞りなく打合せを進めます。ご遺族にとって一番良いお別れができるようにするのです。常に喪家様の繊細な感情に配慮しなければならず、気を遣う部分の多い仕事です。


無事に一つのお葬式を滞りなく終えることは大変難しい作業の連続になります。突然に鳴りだすデスクの電話から始まり病院へご遺体を迎えに行き搬送をします。安置からの御着替え、打合せ、納棺式と進め、葬儀会館での通夜式、告別式になります。霊柩車で火葬炉へ向かい炉から出てきた白骨を収骨して、初七日法要に至るまで、お葬式における全ての工程が完了するまでには数日を要します。その間、何かしらの出来事や予定にはなかった急な対応など、思いもよらぬ事案に遭遇する可能性はゼロではありません。起こり得る様々なトラブルへの対応も含め、常に冷静でいる事が、最終的に故人をきちんと送り出せることに繋がります。滞りなく葬儀を終えて故人を遺族の希望通り送り出せた時は、肩の荷が下りると共に、これからの仕事を続けるための力となります。


お葬式と言うイベントを滞りなく進めるには葬儀屋は非常に心強い存在です。最初から最後まで側に付きそい、ご遺族への細やかな気遣いや助言が、感謝されることに繋がります。葬儀屋は高齢化が進む日本において今後も必要とされる職業です。将来性のある仕事といっても過言ではありません。しかし、精神的にも体力的にもきつい仕事です。決して楽な仕事ではありません。


人の役に立てているという感情は、葬儀屋になって良かったと感じる瞬間です。トラブルを乗り越えて無事にお葬式を終える事が出来た時には満足感を味わえます。この仕事は、喪家様からの感謝と自身の達成感で、他の人には味わえない「働き甲斐」を感じることができる仕事だと思います。

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