おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

閻魔大王に対面する準備

あなたは亡くなりました。三途の川を渡りきるとそこが閻魔大王の居る裁判所です。閻魔大王は地獄を作った神様で、死者の魂を裁く裁判官として知られています。閻魔の名前は古代インドの神様「ヤマ」からきています。ヒンズー教ではヤマは人間として最初に死んだ人で、その後死人の国の王様になりました。閻魔大王は仏教では「地蔵菩薩」とも呼ばれています。お地蔵様に化身した姿で全員の生前の様子を見ているため、善悪の判断をする裁判官として死者の魂を正しく裁けるのです。


閻魔大王が居る閻魔庁とは暗闇に包まれた世界です。死者が閻魔大王の法廷に着くと牛頭(ごず)、馬頭(めず)、赤鬼、青鬼などの鬼に引きたてられて閻魔大王の前へ突き出されます。閻魔大王は太陽のように真っ赤に燃えたまぶしい眼と、雷光のように恐ろしい声であなたに次の質問をします。


不殺生戒(ふせつしょうかい)故意に生き物の命を奪わなかったか?
不偸盗戒(ふちゅうとうかい)盗みをしなかったか?
不邪婬戒(ふじゃいんかい) 不道徳な性行為を行わなかったか?
不妄語戒(ふもうごかい)  嘘をつかなかったか?
不飲酒戒(ふおんじゅかい) 酒類を飲まなかったか?


人間界の5つの戒律を守ったかを聞かれるのです。少しぐらいゴマカスとか、昔の事ですから忘れていて、適当に答えることはできません。大王の横に「浄玻璃鏡」(じょうはりのかがみ)があります。この鏡には現世でのあなたの行いがすべて映し出されます。大王が持っている「閻魔帳」(えんまちょう)には、あなたの罪がすべて書き留めてあります。人間は生まれると同時に守護霊がつき、この霊が生前の善悪を徹底的に書き留めて、死後に閻魔大王に報告しているのです。


閻魔大王の両脇に居るのが「人頭杖」(にんずじょう)と呼ばれる杖の上に乗った生首です。赤い首は悪行を見通し、白い首は善心を見極めると言われています。又悪事が多いと赤い首が火を吐くという言い伝えもあります。閻魔大王を補佐する「司命」は死者の行いを徹底的に明らかにし、「司録」は罪を記録する為の筆や巻物を持っています。閻魔大王はさまざまな方法で、死者の罪を明らかにします。そして裁かれた先に、宣告される判決は、次の六通りの道の先にある世界への生まれ変わりです。地獄道・餓鬼道・畜生道・修羅道・人間道・天道です。天道だけが極楽へ向かう道です。


誰もが持つ迷いの心をたしなめるため、宗教の世界は様々な脅かしを伝えています。閻魔大王の言い伝えも、恐怖で日々の迷いの気持ちを抑えるために生まれました。来世の運命を決める怖い存在の閻魔大王ですが、時には地蔵菩薩に姿を変えて、地獄に落ちる人々を助ける仏様にもなります。


閻魔大王に恥じることのない行動を、普段から毎日積み重ねたいものです。ムラゴンの皆様は、旅立った後に地獄に落とされないよう、今日から五つの戒律を守り真面目に生きようと思い直しましたか?

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