お数珠の珠を見つけます
葬儀会館のホールを掃除しています。必ずと言っていいほど「お数珠の珠」を拾います。弔問の参列者の中で、持って来た数珠の紐が切れて球をホールの床にバラ撒く人の名残です。周りの方が手伝って拾ってくれますが見落とされた一つが寂しく残っています。久しぶりのお葬式にタンスの奥から年代物のお数珠を持ってくる時は注意点があります。袱紗に仕舞う前に軽く引いてみてください。束ねている紐が経年劣化して切れやすくなっています。焼香前にバラバラと落とすのは恥ずかしい時間になります。「縁起が悪い」と言う人もいますが間違いです。仏教の世界では数珠の紐が切れる事を縁起が悪いとは説いていません。仏様が悪縁を切ってくださったと考えます。それだけお念仏に励んだとの証しですし、良く使われたからです。
お数珠は念珠とも言います。インドでヒンズー教のバラモンが儀式用に用いたのが始まりで、その後密教の僧侶が使い始めました。最初は拝んだ回数を記憶する道具でした。「数を記憶する珠」と書いたのがお数珠の語源です。日本では貴族階級しか持つことが許されませんでしたが、鎌倉時代になってから一般の仏教徒も使用するようになりました。数珠には魔除けの効果と福を授かる効果があると言われます。
正式な数珠は108個の珠が2重に連なり房や飾り玉がついています。この108個と言う数字は人間の煩悩の数です。除夜の鐘でおなじみの数字です。宗派によって多少異なりますが、現在では54個、36個、27個などと珠の数は少なくなり、一般的には一重の略式の数珠が使われています。女性用の数珠は男性用に比べて小さく作られています。宗派などを気にする場合、仏具店や百貨店で正式な数珠を購入したほうがよいでしょう。近年は手近な100円ショップでも売られています。
お通夜の時間が近づくと参列者が集まり始めます。どなたの手にもお数珠が下げられています。お数珠は仏式の通夜や葬儀に参列する時とか、法事に出席する際には欠かせないものです。葬儀や法事などで必ず必要になる数珠です。ご先祖様を供養する際には一人に1つ必ず持参するのが大人のマナーです。数珠は人に貸したり借りたりしてはいけないと伝えられています。必ず自分の数珠を持った方が良いと言われるのです。家庭を持ったら必ず用意をして夫婦もそれぞれ持ちます。忘れたからと言って人から借りるのはマナー違反とされています。なぜなら仏教では数珠はその人の分身と考えられているからです。ただし、親の形見の数珠は厄よけとして身を守ってくれるため、代を超えて使用できます。
数珠の正しい持ち方は、座っているときは左手首にかけ、歩くときは房を下にして左手で持ちます。長い数珠は二重にして持ちます。左手は仏様の清浄な世界を表し、右手は信仰の世界を指しているからです。
合掌する時は左手の親指と他の4本の指の間にかけて、指で軽く押さえます。房は真下に垂らしてください。長い数珠は、両手の中指に掛け渡して手を合わせます。席を離れる時に椅子や畳の上に置くのは、やってはいけない仕草です。必ずバッグやポケットの中にしまってください。
お数珠は仏様を拝む大切な道具です。社会人は平均で年に1回以上は通夜や葬儀そして法事の仏事に参加しています。また年齢が上がるとさらにその機会は増える事になります。あなたは自分のお数珠を持っていますか?そして紐は大丈夫ですか?