ブラック葬儀屋が増える
葬儀屋は地場産業です。新しい会館がオープンするとか、老舗の葬儀屋が店を閉めた等の地域の動静が気になります。たまにネットで「小さなお葬式」を検索します。紹介先に地元の葬儀屋が掲載されているかを調べます。過去ブログでも触れているように「小さなお葬式」は葬儀屋ではありません。葬儀屋の紹介斡旋業なのです。自社だけでは集客出来ない弱小葬儀屋がリベートを払って紹介を受け、飛び込んだお客からボッタクル構造らしいと聞いています。当然大手は入りませんし、老舗で地域から認識されていてお葬式がコンスタントに入る葬儀屋は入会していません。
小さなお葬式に電話して申し込むとグループ内だけの地元の葬儀屋が紹介されます。どんな葬儀屋に当たるかは解りませんし、運次第です。先日調べたところ地元で今まで聞いたことのない葬儀屋が紹介されていました。多分この葬儀屋は葬儀会館を持たない、机一つで商売をする「ナンチャッテ葬儀屋」です。机に座っているだけで葬祭業が出来るのかと不思議がる人もおられるでしょう。これが出来るのです。引き受けるのは、今はやりの「直送」や「火葬のみ」のコースです。
電話を受けたら搬送車で病院に向かい、故人をパジャマのまま棺桶に詰めます。事務所で24時間時間おいて置き、喪家様と火葬場で落ち合う段取りを決めます。火葬を済ませてお骨を入れた骨壺を渡したら一件落着です。御着替えも、お化粧も、納棺式も、お花も、焼香もありません。これでも結構な金額が請求されます。
なぜ、このような「ブラック葬儀屋」が誕生してしまったのでしょうか。理由としてお葬式のスタイルの変化が挙げられます。最近ではテレビCMでも放送されている通り、なるべく予算を抑えて実施するお葬式が増加しています。「安ければ安いほど良い」とも言える状況が進みお葬式の価格競争は激化しています。いかに安く出来るかが重要になっているのです。価格競争の行く果ては、どれだけ仕事内容の手を抜いて、利益を出すかにかかっています。その結果お葬式という儀式を省き、亡くなったらそのまま直ぐに火葬を行う「直葬」が人気になりました。こうなると必要なのは「棺桶」「搬送車」「骨壺」で事が足ります。葬儀会館はいりません。祭壇やお花もいりません。ローソクや焼香の用意もありません。白装束の佛衣への「御着替え」も故人の尊厳を守る「死に化粧」もしません。当然スタッフも一人で済みます。なによりもお葬式の知識や能力を持つ葬儀担当者は必要ありません。この仕事には行政の許可がいらないので簡単に開業できるのです。その結果「机一つの葬儀屋」が次々と生まれます。
ブラック葬儀屋と呼ばれるのは、その他の理由もあります。働く人のスキルを求めないので、もし従業員を雇用しても最低限の給与しか与えません。業界全体の給与レベルに悪影響を与えかねないのです。仕事量に対し給与が見合わないとブラックな仕事と言われます。
能力の伴わない葬儀屋の仕事は、喪家様にとって満足のいく内容になりません。業界の評判を落とすことになりかねないのです。世の中の考えが、冠婚葬祭を面倒くさいと感じ始め、お葬式がどんどん簡素になり「死んだら焼くだけ」の風潮が広まりました。結果「ナンチャッテ葬儀屋」が出てきました。