おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

葬儀屋に向いていない人

前回「葬儀屋で働いてみたい人」への応援ブログをアップしたところ「参考になった」等の感想を頂きました。少しでもこの業界が盛り上がれば嬉しいと思い書き込んだ内容です。今まで弊社も沢山の方を面接して採用してきました。本人の努力で一人前になって仕事を任せられるようになった従業員も多くいます。しかし、中には残念ながら務まらずに辞めていく人も結構な数がいました。今回は「葬儀屋に向いていない人」と題して、ブログを始めて見ようと思います。


この業界に向かないと思う人は「感情移入をしやすい人」です。葬儀屋は亡くなった人を送り出す仕事です。当然、大きな悲しみに暮れる遺族に遭遇します。そのため感情をご遺族に移入しやすい人にとっては精神的な負担を受けるのです。もちろん遺族の悲しみに寄り添うことは葬儀屋で働くうえで大切な事です。しかし、一緒に悲しみ心から同調していくとメンタル面が持たなくなる可能性があるのです。悲しみの場面が続きますが、どこかで仕事だと割り切る能力が必要です。


コミュニケーション能力の低い人には、この仕事は務まりません。このスキルはサービス業全般に言えると思いますが、特に葬儀屋は相手が普通の精神ではない時に対応します。戸惑い困惑しているご遺族の希望をきちんと聞き把握した上で、スムーズにお葬式を進める段取りを組み立てる必要に迫られます。そのためはコミュニケーション能力が、通常のサービス業より求められる職種とも言えるのです。又お葬式が終わってからも、法要や仏壇、喪中葉書などの相談に乗るケースも考えられます。仕事が済んだからと言ってもフォローのやり取りも必要なのです。


トラブルが起こると慌ててパニックになる人もこの仕事は向きません。ハプニング発生時でも常に冷静にいられる人だけが務まるのです。参列中のご遺族が急に具合が悪くなるとか、当初の想定よりも弔問客が多くなるなど、数多くのサービス業に中でも、お葬式は急なトラブルが起こる可能性が大きいイベントです。どのような時もスムーズに進行させるには、何時でも冷静さが必要です。急なトラブルへの対応の際に慌てて対処して、もしそれがご遺族や参列者に失礼な態度と思われると、大きなクレームに発展する恐れもあります。


この仕事は体力に自信がない人には務まりません。勤務は拘束も長く24時間365日が営業時間です。お通夜の夜は徹夜になりますし夜勤の電話番もあります。お葬式の件数によって負担が変わるので、立て続けに入ると体力的と精神的にきつくなります。激務と言われる職種です。タフでなければ続けることは困難です。人間が亡くなる日時は予測が出来ません。24時間いつ依頼が入るかは解かりません。仕事とプライベートを完全に切り離したライフスタイルを希望する人には向いていない仕事です。


死体を「気味が悪い」と思う人には務まりません。火葬炉から出てくる白骨を見て「触りたくない」と言う人も務まりません。


最期に付け加えると、霊感の強い人や幽霊が見える人には絶対にこの仕事はお勧めしません。実際に面接に来た方が「なんかゾクゾクする」と言ってすぐ帰りました。

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