おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

葬儀屋で働いてみたい人

若者が働きたい職種に葬儀屋が取り上げられていました。この仕事は「究極のサービス業」と言われます。冠婚葬祭に興味を持つ若者が増えるのは嬉しいことです。特にこれから多死社会に進む日本では葬儀屋は未来がある業種かも知れません。しかし世間の印象が良い職業とは言えない状況もあります。葬儀屋に対して良いイメージを持っている人は少ないのです。周りから「人の死を商売にしている卑しい仕事」と認識され、家族からは「やめとけ」と言われる人もいるようです。


葬儀屋で働くと、ご遺体と対面します。新入社員が慣れていないためショックを受ける場面を見てきました。初めての死体との対面に精神的に負荷を感じるのです。葬儀屋が向き合うご遺体がすべて綺麗な状態とは限りません。中には交通事故により激しい損傷を負っている死体もあります。そのほかにも自殺、腐乱死体、水死体、焼死体、どれも目を背けたくなる恐ろしい状態です。


葬儀屋は労働時間が不規則です。365日24時間の営業時間ですから、従業員は昼勤務と夜勤があります。普通の会社員と同じような時間帯の勤務ではありませんから、体調不良になる人も出てきます。急な業務になることも珍しくありません。プライベートの確保が難しく、突然の出勤を命じられることもあります。シフト制で動いてはいますが、葬儀会館は年中無休ですから呼び出される可能性はゼロではありません。人員が足りないといった状況で急に呼び出し電話が鳴ることもあります。


どの職業でも仕事の知識は必要ですが、特に葬儀屋は覚えなければいけない内容が数多くあります。一番必要な仏教の知識だけでも教本一冊ではまとまりません。宗派の違いはもちろんの事、司会者としてアナウンスを差し込むには御経も覚える必要があります。又、昔からの風習や言い伝え、そして宗教上のしきたりもあるため、それに基づき進行しなければ大きなトラブルになるのです。


見た目より重労働な仕事が葬儀屋です。葬儀会場にて祭壇を組み立てるには、数人の力が必要です。水を含んだオアシスの詰まった供花スタンドは簡単に持ち上がりません。初めてご遺体を搬送して感じることがあります。「死んだ方はなんて重いのか」です。ベッドからストレッチャーへ移動する作業は力が必要です。周りで見ている家族の目もありますから、ご遺体を移動させる行為は気を遣う重労働なのです。


ここまで聞いても「当然覚悟していて、それでも働きたい」と思われる方は大歓迎です。突然の出来事に困惑し戸惑う喪家様に、寄り添い、ご遺体とご遺族に、気を使い、やり直しのきかないイベントを、間違わないで進行させるプレッシャーと闘いながら毎回向き合う仕事です。ご家族が大事な方との最期のお別れをしっかりと全う出来るかは葬儀屋にかかっているのです。当然、無事終わった時は、心底からホッとします。そして「貴方のおかげで無事に送り出せた」との言葉を有難く頂くのです。


高齢化と多死社会に進む日本において葬儀屋の存在は大きいと思います。つまり、この先も葬儀屋の出番となる時代は続くと考えられるため将来性もあります。仕事に対する喜びを感じられるこの業界です。働いてみたい方を応援します。

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