おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

親が死んだらホッテおく

この頃、心が痛む新聞記事を見つけることが多くなりました。自宅で亡くなった高齢の親の遺体を放置したとして、同居する中高年の子が死体遺棄容疑で逮捕される事件です。80代の親が、ひきこもり状態などにある50代の子を養う「8050問題」が背景にあるとみられます。近頃ではこれが「9060問題」に移行しています。


8050問題の名付け親は大阪府豊中市でソーシャルワーカーを務める勝部麗子さんです。「事件は当事者家族が行き着いた最終地点で社会的孤立を象徴する出来事だ」と警鐘を鳴らしています。同居する高齢の親の遺体を放置したとして死体遺棄容疑で逮捕された人は、2023年は全国で30人程いるようです。ほとんどが40∼60代の無職の男性です。逮捕後の調べに「遺体をどうしたらいいか解からない」「相談する人がいなかった」などと話しているようです。親の死体遺棄事件は新聞記事にならずに不起訴になった事例も少なくないと言われています。


神奈川県内の無職男性(63)は23年6月、95歳で亡くなった父の遺体を半年にわたって放置したとして逮捕されました。男性は「お金がなかったので葬儀の手続きができなかった」と容疑を認めその後不起訴となっています。関東地方に住む60代の無職男性は今年、90代の父の死体遺棄容疑で逮捕された後、亡き父の年金をだまし取ったとする詐欺容疑で再逮捕されました。裁判で執行猶予付きの有罪判決を受けて釈放された男性は毎日新聞の取材に「今後の生活を考えると亡くなっても人を呼べなかった」と話しています。父親の年金だけが収入源だったのです。


親が死んでも葬儀費用が出せない時は、どうしたらよいのでしょうか?自治体では、生活が困窮して葬儀費用が無い遺族を対象にした葬祭扶助制度があります。生活保護法18条で定められた制度です。制度を利用できるのはご遺族が生活保護を受けているなど葬儀費用を支払う資産や収入がない場合に限られます。故人の住んでいた市町村役場に葬祭前の事前申請が必要です。


持ち家があるとか自家用車があるなどで生活保護が受けられない世帯の場合は、自治体によっては割安で設定されている「市民葬」で行うという選択肢もあります。利用するためには、故人もしくは喪主の住民票があることなどの要件を満たさなければなりません。各自治体により設定の有無や要件は異なるため確認が必要です。


直接葬儀屋へ相談する方法もあります。支払いについては提携する金融機関でローン組みや分割払いが可能な場合もあります。最低限の火葬のみでしたら、後で自治体より支給を受けられる「埋葬費」の金額の中で請け負うことも可能です。


全国で20代前半からの引きこもりが増えています。きっかけとしてイジメや人間関係の悩み、成績の低下や受験や就職活動の失敗などが挙げられます。子供が引きこもると親は一生面倒をみて最後は亡くなっても、そのままホッテ置かれるのです。


貴方のご近所にも必ずいます。8050問題に詳しい愛知教育大の川北稔准教授は「死体遺棄事件に限らず、親が入院するなどして子どもが家に取り残されるケースは増えている。社会的孤立防止の観点で見ると、もしもの時にはSOSを出して周りが助けるような取り組みが必要だ」と指摘しています。

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