葬式をしないと言う方へ
終活セミナーでよく聞く言葉があります「私の葬式は、しなくていいから」です。お葬式をしなければならないと定めた決まりはありません。お葬式をしなくても法律上は問題ないのです。ただし亡くなった人に気がついたら、ご遺体を速やかにかつ適切に処理しなければいけません。さもないと故意に放置したとして死体遺棄罪に問われてしまいます。そして行政上の死亡届を始めとする様々な報告も必要です。
お葬式をしないと決める方の理由の多くが「お金をかけたくない」です。従来のお葬式は100万円単位のお金がかかります。日常の買い物からはかけ離れた大きな出費に驚きそのようなお金は使えないという理由から、しないことを選ぶのです。お葬式をしなければ、式場や祭壇利用料、お坊様へのお布施などの主な部分の費用がいらなくなります。必要になるのは棺桶などの火葬に関わる費用と諸経費だけです。
「風習としての従来のお葬式にこだわらない」のも理由になりました。仏教離れが進み無宗教葬になりました。お寺を呼んで儀式をしないのでしたらセレモニーは必要なくなります。以前であれば「葬式をしない」などと言おうものなら「お葬式をしなければバチが当たる」「読経してもらわなければ成仏できない」と親族から大反対されたものですが、家族だけで送ることが増えて問題が出にくくなりました。
お葬式を行うには各方面に訃報の連絡が必要になります。弔問に訪れた方の接待やお通夜と告別式の挨拶及び会食でのもてなし等対外的な対応にも追われます。お葬式をしなければ、連絡や対応に追われることが無くなります。香典を貰いそのお返しなどを考えて準備し発送する苦労もいらなくなるのです。しかし故人や喪主のお付き合いの範囲が広い場合は、お葬式をしないと後日知られてから「香典を持参したい」「お線香をあげたい」等で弔問客が遺族宅を頻繁に訪れることになります。多数の弔問者への対応が煩わしいお葬式ですが、死去を速やかに知らせる方法と、別れを告げたい方を一挙に集める場と考えれば一番効率的な手段なのです。
お葬式をしないと選択をする方は確実に増えています。しかしまだ周囲からの理解を得にくいのも事実です。故人の逝去を知った親族の中には、お葬式をしない決断に抵抗を感じる方も多くいます。「故人の遺志で」と喪主が葬式をしないと決めていても周りから反対されて、結局くつがえるケースを数多く見てきました。
「故人のお葬式をしません」と決めるには、なぜ葬式をしないという結論になったのか、詳しく丁寧に説明して親族を始めとする全員に納得してもらうのが大事です。親族の誰かが納得しないまま火葬だけの見送りとしてしまうと、以後わだかまりが生じます。又、お別れの時間を充分にとれないため、惜別の気持ちの整理をするのが難しくなると、デメリットを指摘する意見もあります。儀式の無い短い時間の中でも、お別れと感謝の気持ちを表す時間を設けることが必要だと思います。
葬式をしないと決めるなら、本人が生存中に家族を始め親族の皆様の了承を取っておくことを勧めます。死去後のトラブルは残された家族にとって厄介なのです。
「自分の葬式はしない」と考えているのでしたら早めに身内に伝えておきましょう。