おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

そろそろ遺影を準備して

葬儀屋との打ち合わせで半分パニックの時に「すぐ用意してください」と言われて必死であちこち探し回るのが、遺影写真を作るための故人の顔写真です。高齢になると一人の写真は20年以上撮ったことが無いと言われる場面にも出くわします。その結果50年以上も前の結婚式の写真とか、殺人犯みたいな顔で写っている免許証の写真を出される事態も起こります。これでは故人も安心して成仏できません。


葬儀で使われる写真は「四切」と「L判」の2種類です。黒枠の額で祭壇に飾り、その後、家族が抱えて火葬炉の前や法要の祭壇に置くのが四切サイズです。L判サイズは仏壇やリビングに飾ります。この頃は祭壇に飾る写真をフィルムに印刷してバックライトの額で点灯して見栄えを良くしたり、大型モニターにスライドショーのように様々な写真を映し出したりする方法も見られます。


遺影写真を作る原盤で一番大事な事があります。ピントが合っていて大きく引き伸ばした時にボヤケない写真を選んでください。また写真は故人がカメラ目線で写っているものが最適です。葬儀では遺族や参列者が遺影を見ながら語り掛けます。しっかり故人の目を見つめてお別れが出来る写真が記憶に残ります。最近はスマートフォンで写真を撮る機会が増えています。データからの遺影写真の作成も可能です。


終活セミナーの相談で、若い時の写真を使いたいと希望する方がおられます。ですが遺影写真は亡くなった年齢まで生きた証明にもなります。一般的には亡くなる前で元気だった頃の写真を選びます。家族が一番見慣れた顔の写真を使用することで、故人の歩んできた年月を振り返りながらお別れすることが出来ます。遺影として作った写真は、お葬式の後で何年もの期間、子供や孫に引き継いでいきますから、故人の人柄が滲み出すような雰囲気の写真を選んでください。


結婚式の集合写真などで多人数が写っている場合は顔が小さくなり、大きく引き伸ばすとピンボケになりやすいのです。旅行が好きな方は旅先での1枚を選ぶのですが、友人達と写っている写真には着ている衣類や背景などで、一緒に写っている人達が特定出来てしまいます。中には「連れて行かれるようだ」と嫌がられるケースも出てきますので注意してください。


海水浴の時だと半分裸の写真を出されても困ります。この写真は顔を切り取ってスーツに貼り付けました。昔から遺影写真の加工は行われてきました。顔だけを着物を着た人物と入れ替えるという修正を施していました。実家や本家に行ったときに着物を着た白黒の遺影写真が飾られているのを見た方は多いと思います。修正技術は各段に進化しましたので大概のことはできます。だからと言ってプリクラのように目を大きくするはお勧めしませんが、皺を少し無くして肌をきれいに見せる加工などは要望が多いです。笑顔の写真の服装を一部修正したいと希望すると、胸元の開いているシャツの場合そのままのシャツで首のボタンをキチンと留めた写真に変える事も可能です。お顔を引き立たせるには背景も大事です。今は青空に白雲がトレンドのようです。


人生の終わりに向けて準備をする「終活」の一つとして元気な内に自分で選んだお気に入りの一枚を用意する方が増えてきています。そろそろ準備を始めてください。

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