おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

ペットと故人は一心同体

先月、ご葬儀を終えた喪家宅に後祭り祭壇の引き上げにうかがいました。飾り段の上に、故人のお骨の入った大きな骨壺と、その横に一回り小さい骨壺が並んで置いてありました。喪主様が話し始めました。


「葬儀屋さん、この小さいほうの骨壺は可愛がっていた犬のお骨なのです。故人と一緒に埋葬してあげようと思い、今、墓地か納骨堂を探しているのですよ」
「ワンちゃんも亡くなったのですか。それは、残念でしたね」
「故人がとても可愛がっていまして、亡くなったのが分かったのか、お葬式の日から元気がなくなってきていました。そして数日で死んじゃったのです」
「可愛がっていたペットも故人の死去が解ると聞いています」


亡くなった方が可愛がっていたペットが、故人の死を理解しているというお話はよく聞きます。納棺の時に、そばに来て顔を舐めたとか、自宅から葬儀場に行く準備をしているときに、一緒に連れて行けとうるさく吠えたとか、出棺のときに、今まで一度も聞いたことのない遠吠えを急にし始めたとか、悲しみを感じる感情はペットも人間と同様に持っているのです。


高齢者とペットは家族同然です。家族の一員ですから亡くなったらペットと一緒にお墓に入りたいと望む飼い主は多くいます。しかし現実では、同じお墓に納骨されるのはハードルが高いのです。法的には人間のお墓にペットの骨を入れることは問題ありません。しかしペットの骨を通常の墓地に納骨するのは仏教の観点からは不可能です。仏教の教えでは輪廻でペットは人間と違う道を歩むとされています。さらにお墓に動物の骨を埋める事を快く思わない人も多いのです。家族や親族など身近な人々の中にもペットと一緒にお墓に入ることを嫌がる方もいます。ですから御寺の境内墓地を始めとする公共霊園や管理墓地では、動物の納骨は強く断られます。


一つだけ方法があります。決して葬儀屋が言っていたなどと話さないでください。ペットの遺骨は法的には物として扱われます。先にペットが亡くなりお骨が手元にある時は、飼い主のお葬式の納棺の時に副葬品としてペットの遺骨を棺桶に入れてしまうのです。ペットの焼骨はお骨上げの時は崩れて解からなくなります。飼い主が先に亡くなりペットが後を追った場合は、飼い主の骨壺の中にペットのお骨を入れます。骨壺の中に眼鏡や指輪、愛車のスペアキーなどを入れる事はよく行われます。細かく砕いて袋に入れたペットの骨を飼い主の骨壺の中に入れても、誰も気づきません。もちろん、お寺を始めとする境内墓地や霊園の管理者には内緒です。


ペットを家族同然と考える現代では、一部の民間霊園で専用区画を設けてペットと一緒に入るお墓を提供するところも出来てきました。宗旨宗派を問わないとか、専用区画として収蔵スペースは別々にするなどの制約もある様ですが、探すとペットと一緒に入るお墓を提供する墓地や霊園も見つかります。樹木葬を提供する霊園ではペットと一緒に入るプランもありました。境内墓地であってもご住職の考え方でペット供養を積極的に行うご寺院もあります。


ペットと一緒にお墓に入りたいと願うムラゴンの読者の皆様、しばらくは愛するペットの遺骨を自宅に保管しておいて、自分の納棺の時を待つか、ゆっくりとお墓を探してみては如何でしょうか。

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