大往生を望む方へ
90歳近いご老人が、自宅のベッドの上で静かに息を引き取られました。
食事も出来ていましたし、昨夜までお話もしていたので、
家族も急に亡くなるとは、思いもしませんでした。
朝になり、起きてこないので、見に行ったら、息をしていなく、冷たく
なりかけていました、動顚した家族は、葬儀屋に電話を入れました。
葬儀屋は医者が死亡宣告をしませんとご遺体に触れることが出来ません。
「お医者さんに見せてください」
と伝えて、ご自宅へ向かいました。
かかりつけのお医者さんが、いなかったため、家族は救急車を呼んでいました。救急隊員は、蘇生の可能性のある病人は運びますが、心肺停止で、瞳孔も開いている、冷たくなった死体には、手を付けません。
その時点で、不審死となり、警察が呼ばれました。サイレンを鳴らしながら何台ものパトカーが玄関前に止まります。ご近所が「何事か」と、集まります。入り口に黄色いテープが張られ、刑事が家族に宣告します。
「誰も手を触れないように、検死の監察医を呼びます」
まるで、テレビの「相棒」の世界です。
はらはらしながら、見ていた家族が、
「事件だとでも言うのですか、早く着替えさせてあげたい」
刑事は、
「立ち入り禁止です」 「皆さんの話を聞きます」
警察は、殺人事件を疑うのです。
監察医が着ました。検死後、
「老衰のようですが、死因の特定のため解剖します」
家族は、必死で訴えます。
「解剖なんてやめてください」
しばらく鑑識を交えた話し合いがあり、やっと刑事から
「事件性は無いようですから、結構です」
純白の衣類を着せて、新しい布団に寝かせる事が出来たのは、
半日以上が、経過していました。
つくづく、ご自宅での大往生は難しいと、感じました。