おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

老老世帯が増えています

少し前までは、お迎え時の対面やお葬式の打合せでお話をする時に、ご家族4~5人が待たれていてお会いするのが普通でした。それが、この頃はお迎えに行っても残された配偶者だけが待っている霊安室や、打合せを行う場が喪主となる配偶者のお一人だけで対応するなどの、老老世帯が非常に多くなりました。お子様がいても離れた遠方に居住していることが多く、簡単に来ることが出来ずに間に合いません。又、お子様ご家庭には、まだ小さな子供が居る事も多く、万が一の時に急遽駆けつけるのも難しくなっている状況です。


日本で大きな問題になりつつあるのが「老老介護」と言う現実です。老老介護とは65歳以上の高齢者を65歳以上の高齢者が介護する状態です。ご夫婦が75歳以上×75歳以上ですと「超老老介護」といます。当然日々の身体面と精神面の負担は老老介護よりも大きくなります。2019年の厚生労働省調査で、高齢者世帯の内65歳以上×65歳以上の世帯の割合が59.7%もあります。そして75歳以上×75歳以上の世帯は33.1%もいるのです。


なぜ老老介護がこのように増えてしまったのでしょうか?原因は「核家族化が進んだこと」と「平均寿命と健康寿命に差がでること」があげられます。


一番の原因は「核家族化が進んだこと」だと言われます。核家族とは、夫婦のみの世帯や夫婦と結婚していない子どもの世帯、父親または母親とその結婚していない子どもの世帯の事を言います。核家族化が進むと親世帯と子ども世帯が離れて暮らすケースが多くなり、結果、高齢者夫婦のみで生活をすることになります。これらが老老介護へと繋がります。


現在の平均寿命は男性80.98歳、女性 87.14歳です。そして健康寿命は男性72.14歳、女性 74.79歳になります。そうなると平均寿命と健康寿命の差は男性8.84歳、女性で12.35歳の開きになります。この期間が介護を要する可能性が高い年月です。医療の発達や食文化の変化により平均寿命は年々延びています。しかし身体が自由に動く健康寿命は伸びません。平均寿命と健康寿命の差を縮められない限り、老老介護の世帯は増え続けるのです。


この老老介護世帯の片割れが亡くなると当然取り残された高齢者は1人でお葬式の準備をして、その後は一人暮らしになります。高齢者の独居生活は、大きな問題が起きてきます。


一人暮らしになる高齢者は認知症にかかりやすくなります。症状が進むと近所の住人とトラブルになります。例えば悪化に伴いごみ出しのルールを守れなくなります。ゴミ屋敷も増えます。大声で騒ぎ騒音の苦情が発生します。徘徊も見受けられ最悪の場合、火事や事故に繋がります。認知症高齢者が増えて、独居生活をさせるのは大きな社会問題なのです。


孤独死もまた避けられない大きな問題の一つです。東京都福祉保健局が行った調査結果「東京都監察医務院で取り扱った自宅住居で亡くなった単身世帯の統計」によると東京23区で65歳以上の高齢者が孤独死した数の推移は、2003年は1,441人であるのに対し、2012年は2,727人と、およそ倍に増加しています。10年間で二倍近い数字に延びているのです。
日本は「超高齢化と老老介護世帯の増加」にまっしぐらです。しかしながら、政治と行政は老人世帯に優しくありません。


本日のお葬式の打合せも憔悴したお爺ちゃんがお一人です。目の前の喪主様も奥様の介護を長く続けて、先ほど見送られました。どうしても、この高齢のお爺ちゃんの、この先の暮らしが心配なのです。

×

非ログインユーザーとして返信する