法要をする人がいません
お葬式が無事に終わり皆様ホッとなされます。その後、これから何に取り掛かろうかを考えます。近頃はエンディングノートの記入とか終活のアドバイス、相続の相談や断捨離などの情報が、テレビ、ネット、書籍で大量に流れています。残された家族はこれらの知識で死後の手続きに取り掛かります。ところがお葬式後に行う大事な儀式の、お寺を呼ぶ法要の内容を詳しく知る手掛かりは少なくなっています。昔から続いてきた葬儀後の法要を省いてしまう方や、おろそかにしてしまう喪家様が多くなっているようです。
事務所で帰り際に、懇意にしているお坊さんが雑談まじりに、こぼされていきました。
「近頃はお葬式に呼ばれても、その後のご供養に呼ばれることが一切なくなった。仏様が無事に極楽に着いているか気になります。どうも法要や法事の知識が薄れているようです」
お葬式の後の法要で皆様がよくご存じなのが「初七日法要」です。この頃は火葬場でのお骨上げの後、会食の席に移りその会場で初七日法要を行う喪家様が多くなりました。ですが本来の初七日法要とは、亡くなった日から七日後に執り行う法要です。以降二七日、三七日、四七日といった具合に、七七日まで7日ごとに法要を執り行います。この法要を「追善法要」と呼びます。それぞれに面会する仏様が決まっておりその時の修行も決められています。詳しくは過去ブログ22年4月の「四十九日間なにするの」に綴っています。お寺様の本音としては7日毎にお坊様がご自宅へお参りするのが本懐だと考えているのです。
49日間の旅が終わると来世の生まれ変われる場所が決まります。満中陰とも呼ばれる四十九日法要を大事にするのは、仏教的には来世の行き先が決まる日であり民俗的には亡き人の霊がご先祖様の仲間入りをする日とされているからです。供養の中でも特に重要な法要で、少し前まではお葬式に参列した家族や親戚が一堂に集まって盛大に行われていました。
逝去してから1年後の法事は一周忌、2年目は三回忌と呼びます。数え年で計算しますから三回忌は3年目ではなく2年目になり七回忌は6年後になります。一周忌三回忌七回忌などの法要のことを「年忌法要」と呼びます。亡くなった日と同じ月と日に行われます。
一周忌と三回忌は故人の友人や親族など広い範囲の人を招いて行いますが、七回忌からは身内のみで行われます。今は次の十三回忌をもって弔い上げとすることが増えていますが、本来は三十三回忌、又は五十回忌を故人の法要の終わりとしていました。
昔の喪家様が四十九日、一周忌、三回忌の法要を大事に行っていたのは、お墓に遺骨を納める納骨をする区切りの日と考えていたからです。お墓がない方は急いで四十九日までに用意しなくとも、一周忌や三回忌を区切りと考えて霊園やお墓探しを行う方も多いです。
お寺が重要と考える追善法要にお坊様が呼ばれなくなったのですから、その後の年忌法要にも当然声が掛からなくなりました。それだけでなく、檀家でもお彼岸やお盆の供養が行なわれなくなってきたようです。お坊様から「そろそろお伺いいたしましょうか」と尋ねても「忙しいので今年は結構です」と断られることも多くなったと聞いています。
お葬式が終わった後に一つ一つの法要の日を決めて供養をするのは、日本人が考え出した家族と亡き人との繋がりの儀式でした。順番に法要を済ましていくことで、故人の死をゆっくりと受け入れる事が出来たのです。ですが、いつの間にか法要が省略される時代になりました。