おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

家族葬で大事なのは連絡

ほとんどのお葬式が少人数で行われる家族葬になりました。参列者は家族と一部の親戚だけで行います。お葬式に来てもらう人選は喪主様の考えで決まります。血縁で繋がる親族と結婚で生まれた姻族の親戚から、どこまでの範囲で呼ぶかの選抜を皆様迷われます。結局先を考えて判断します。連絡先をこれからもお付き合いが続く親戚だけにして、故人の死後は関係が薄れてしまう親戚には知らせない選択をする喪主様が多いようです。


死去の連絡は参列者だけに絞り、それ以外の方にはお葬式終了後に報告をします。お葬式の参列者の選別をスムーズに行うには、あらかじめ出席人数を決めておくのも一つです。万が一の時に誰と誰に連絡するかは結構迷う事柄です。しかし、過去の事例では葬儀参列の連絡を省いた親戚の中から、後から知った時に「どうして自分だけ葬式に呼ばれなかったのか」とのクレームが出たトラブルがありました。


そのためにも、お葬式に呼ばない親戚の方へは、きちんとした連絡が必要なのです。お葬式前の連絡でしたら「死去した事、今までの故人への感謝、家族だけでお葬式を執り行うので、参列は辞退して欲しい」と連絡をすることをお勧めします。ただし、連絡受けた相手から電話口で「焼く前にひと目会わせろ」と断れなくなる時もあります。
お葬式後の連絡でしたら、最初に逝去したことを伝え、いつ死去したかを明確にします。生前のご厚意に対して感謝を述べて、すでにお葬式を終えたことを伝えます。家族葬で家族のみで行ったことも付け加えます。「どうして葬儀に呼んでくれなかったのか」とか「最後に会いたかったのに」と不満が出た場合は、必ず「故人の強い遺志を受けて、家族だけで行なった」と伝えます。そして、訃報の連絡が遅くなった事と葬儀後の事後報告になった事に「お許しください」と誠意を込めた謝罪を伝えることが大切です。


一般のお葬式と違い家族葬の場合は訃報を広く周りに知らせることをしません。それどころか、出来るだけご近所や友人達に知られないように気を使います。家族葬が増えてもルールやマナーはまだ広く周知しているとは言えません。ご近所に住むご高齢の方は、お葬式と聞きつければ必ず駆けつけるものと思いこむ人も多いのです。万が一にも死去の通知がご近所に流れると、呼ばれていないのに弔問に訪れてしまうトラブルを招くのです。
家族葬はご近所の方々の参列をご遠慮していただくお葬式ですが、故人が他界した事をご近所にまったく知らせなくて良いという事ではありません。自宅に着いた寝台車で気づかれたご近所には「身内だけで葬儀をするので、皆様のご会葬はご遠慮いただきたい」と説明します。お葬式後は故人と交友のあったご近所のお宅へ「葬儀を無事に終えた事と故人への感謝、そしてこれまでと変わりないお付き合い」を直接伝えに訪問することは、地域住民としての礼儀といえると思います。


喪主様が通達の内容を迷うのが職場への連絡です。お葬式は長ければ1週間はかかる時があります。忌引休暇等の関係上職場へは、死去後すぐに電話連絡をする必要があります。その際に「家族葬であること、葬儀日と会場は広めない事」をお願いします。「関係者の弔問やお香典、供物などを固く辞退する意向」と必ず付け加えます。会社に連絡する際に「家族が死去しました」だけを伝えると、葬儀の日程や場所の情報が社内で共有され、上司や同僚が葬儀に来ることになってしまいます。


家族葬は「なぜ連絡をくれなかったのか」「お葬式に参列したかった」などの不満が出ることがあります。そのためにも迅速な連絡と葬儀後の謝辞の言葉を伝えるのが重要です。

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