おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

ラインでお悔やみは疑問

喪主様と打ち合わせの最中です。先ほどから喪主様のスマホが鳴りやみません。特にLINEの通知音が「ライン」とか「ピロローン」とか、投稿が来るたびに叫びます。電話の着信も多く、結構大きめの音量でドキドキするような曲調の調べが、打ち合わせを中断します。突然の死去と言う通常ではない状況の中での打ち合わせですから、携帯電話に割り込まれることは覚悟していますが本音は「もう少し、他の対応が出来ないかな」と思っています。


納棺式、通夜式、告別式そして火葬炉の前でも、スマホの着信音は迷惑をかけ続けます。静粛な館内に突然「トゥトゥル トゥトゥルトゥトゥ トゥトルン」とLINEの呼び出し音が響きます。参列者が多い時はやむなく「マナーモードで、一旦オフにして」等のアナウンスを流す時もありますが、少人数の家族葬では、あえて注意事項の案内はせず、個人判断に任せます。すると、静寂の中とか読経の最中に、突然大音量で叫びだすスマホも多く見受けます。


突然の死去の連絡を受けた人が、故人の死を悼み遺族に悔やみの言葉をかけようと考えるのは当然の想いです。少し前までは、すばやく連絡する方法として固定電話が使われました。現在のスマホ時代になるとメールやLINEで連絡する人がほとんどです。たしかに簡単ですし確実に早く伝わるメリットもあります。家族のグループラインを作り、遠方にいても万が一の危篤や訃報を受ける準備をする家族もいます。送り主と親しい間柄で、相手から訃報の連絡をLINEで受けたので、その返信としてLINEを使うのでしたら問題はありません。中には時差のある外国にいて訃報の返事をしたいが、電話ではかえって迷惑になりそうな時間帯などの時はLINEは便利な方法だと思います。


LINEでの訃報は家族とか親戚間なら問題ないと思いますが、一般の方は送る前に相手との関係性を考慮してみる必要があります。場合によってはLINEを活用した方がスムーズに連絡が取れますし、操作も簡単で気軽に送れてしまう利点は多いのですが、お葬式と言う弔事に関しては送る前に本当にLINEで構わないかと一旦考える時間を持ってください。


弔事においてメールやLINEなどを使用することに抵抗を覚える人はまだまだ多いのです。特に形式を重んじる人や目上の人に対して送るのは注意が必要です。冠婚葬祭のマナーとしては、まだ認められていないLINEの弔事は不作法とされて失礼になるのです。


特にお葬式に参列は出来ないけれども、お悔やみの言葉伝えたいと思う人が、大事なメッセージをLINEで送るのはお勧めしません。やはり故人を敬うのなら電報で送る弔電がスマートだと思うのです。弔電にはお悔やみの言葉と一緒に線香やお花などを送れるセットもあります。24時間受け付けていますし電話の他にインターネットからも申し込み可能です。なによりも良いことは、受け取る相手の行動を邪魔しません。


一般の方が弔事の時のLINE使用は、まだ正式なマナーとまでは言えません。特にお悔やみの言葉をかける場合で使用する場合は状況や相手との関係性を考慮して判断するのが大事です。やむなく使う場合にも、基本的なお悔やみの言葉を使い、失礼のない文面を心がけ、なによりも送る時間帯などの配慮も必要です。


便利な連絡方法として捉えられるLINEですが、お悔やみを伝えたいと思う方が手軽に使用し、お葬式の時に喪主様のスマホが鳴り止まない現状は、少し疑問に感じています。

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