始まりは死亡診断書から
貴方が帰り道で倒れている人を見つけたとします。驚いて抱き起し触ってみたら冷たい身体に気がつきます。この時点で「この人は死んでいる」と思われるでしょうが、救急車を呼ぶときに「死んでいます」と宣告するのは貴方にはできません。死亡宣告が出来るのは医師、歯科医師、検視官だけです。ニュースで「遭難者が心肺停止で発見された」と流れるのは、その時点では死亡確認をする人が居ないからです。権限を持つ人が死亡宣告をした後に「死亡診断書」又は「死体検案書」が記入されて初めて法的に死体と認められます。葬儀屋は死亡宣告を受けていない遺体は防腐の処置が出来ません。万が一にも宣告前の身体にドライアイスを置いてしまうと過失致死とか死体損壊罪になりかねないのです。
死亡診断書とは人が死亡したことを医学的と法律的に証明した書類です。この死亡診断書が無いと死亡届を提出できません。当然、お葬式や火葬が出来ないだけではなく、故人の年金の停止や生命保険の受取り、そして相続などの手続きを行うことが不可能になります。
死亡診断書は死亡届と一対になったA3サイズの用紙です。左半分に死亡届、右半分が死亡診断書になっています。医師により記入された、死亡者の氏名、性別、生年月日、死亡した時刻や場所、死因などが記載されます。訂正は許されません。死亡診断書に似た書類に死体検案書というのがあります。死亡診断書と死体検案書の用紙は同一で記載内容もほぼ同じです。どちらが発行されるかは死因によります。
患者として治療を受けその結果病院で看取られた「死因が明確な死」の場合は死亡診断書が記入されます。これに対して事故死、事件死、災害死、自殺などの場合は死体検案書になります。自宅での突然死などで死因が明確でない場合は、警察の検視官により死因や死亡時刻を確認する検案をした上で、異常性がないと判断できたら死体検案書が作成されます。異常死の場合はさらに鑑識や司法解剖による検視が行われる事件死になります。
病院で亡くなると死亡した当日か翌日に死亡診断書が発行されます。死亡診断書を受け取ることが出来るのは、死亡した人の配偶者もしくは3親等以内の親族に限られます。代理人が受け取る場合は委任状の提出が必要になります。
保険診療ではないため、死亡診断書を発行するための料金は全額自己負担になります。料金に決まりはなく医療機関により請求が変わります。1通5,000~20,000円が目安です。
各種手続きにはコピーで対応できますが、原本が必要な場合は死亡した病院で再発行が可能です。ただし、その際にも料金が必要ですし再発行にかかる時間も取られます。
病院で看取られて担当医から死亡診断書を受け取ったら、診断書の右側の死亡届を記入します。役所に提出する期限は死亡を知った日から7日以内です。期限を過ぎると法的に罰せられます。大概は葬儀屋が受け取り代行しますので渡してください。死亡届が受理されて火葬許可申請書を提出すると、遺体の火葬に必要な「死体火葬許可書」が発行されます。
役場に提出する死亡診断書は原本の1通です。しかし、この診断書はこの後の各種の手続きに必ず必要になります。必ず、貰った時点で10枚程のコピーを取ってください。コンビニに行く時間が取れないのなら、渡した葬儀屋に「診断書をコピーして後でください」と声をかけます。
良心的な葬儀屋は言われなくとも「死亡診断書」のコピーを必ず渡してくれるはずです。