おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

日程を急がす悪徳葬儀屋

テレビで「お葬式の決定までは数時間しかありません」と葬儀会社のCMが流れています。ネットで呼ばれた葬儀屋が必ず最初に切り出す言葉があります。「葬儀ホールと火葬場を早く決めないと出来なくなります」と脅かし、ご葬儀の日時と内容の決定を急がすのです。


悪徳葬儀屋は早く決める理由を次々と挙げてきます。「高齢化社会の今は亡くなられる方が多いので、早く火葬炉の予約をしないと一杯になります。出来るだけ早く火葬炉で焼かないと故人の身体の腐敗が始まり状態が悪くなり参列される方にご迷惑がかかります。日程が延びるとご遺体の保全にドライアイスが多量に必要なので余計な費用がかさんでしまいます」ここまで言われると不安が募ります。お葬式に詳しい方はいません。初めての経験で何をどうしていいか分からず「とにかく急がなくては」と思いこむ方が多いのです。


家族の死去と言う突然の出来事に動転している喪主様に次々と畳みかける戦略は、ボッタクリ葬儀屋の常とう手段です。お葬式の事をほとんど知らないご家族は言葉の一つ一つに納得して言われる通りに提示された内容を信じて頼んでしまいます。その結果が驚く金額の請求に繋がってきます。


しかしお葬式の日程決定は、急がなくて良いのです。むしろ納得がいくまでじっくり考えてください。日程の決定には、ご家族と親戚が問題なく集合可能な日を調整し、日常生活やお仕事の負担にならない日を選び、可能な限り多くの人が納得する形で行うのが一番良いのです。担当者にせかされてお葬式を決めてしまうと、必ず悔やまれる施工になります。


死亡届を出したら直ぐに火葬しないと法律違反になると思い込んでいる方もおられます。法律上は「故人の死を知った日から7日以内」に死亡届を出さなければいけないと定められています。多くの方が誤解しているのは火葬も7日以内でないと違反になると思い込んでいることです。お葬式の日程を早く決めないといけないと思い込むのは、その誤解からが多いのです。死亡届の提出期限は決められていますが、その後のお葬式の日取りと火葬の日時は、いつまで延長しても問題はありません。実際、大学の医学部で行われる解剖実習のためにご遺体を献体提出すると、火葬は早くても一年後になります。献体の場合は死亡届後に申請する火葬許可書の日時の欄は空欄で提出します。


時間を置くとご遺体が傷むという説も、あまり気にしなくとも大丈夫です。しっかりとドライアイスの管理が行われ、納棺をしてしまえば1週間は問題ありません。費用は掛かりますがエンバーミングと言う処置を行えば数か月以上も生きているような状態が保てます。


もう一度言います。「亡くなったら出来るだけ早くお葬式をしましょう」と日時の決定を迫る葬儀屋は信用できません。葬儀屋の担当者が、余裕を与えずに次々とせかし、内容の説明のないままに準備を進めるのは、葬儀屋にとって都合の良いお葬式が出来るからです。


慌てずに葬儀屋を選び、提出してきた葬儀プランをじっくりと検討し、納得がいくお葬式をしてください。良心的な葬儀屋はそのお手伝いを喜んでします。せかして日時を決めさせる葬儀屋ではなく、ゆっくり時間をかけて説明する気遣いを見せる葬儀屋が良いのです。
担当者の最初の言葉が「ご遺体が傷むので葬儀日程を直ぐに決めてください」ではなく「どんなお葬式をご希望ですか」と話しかける葬儀屋を選んでください。

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