おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

関東と関西で違うお葬式

納棺式を終えてご自宅の玄関から棺を出そうとした時です。親戚の方からビックリしたような声が上がりました。「頭から出さないと極楽に行けない。棺桶をグルっと回して反対にして」弊社の地域は関東圏にあります。関東の出棺は足元から出します。その親戚の方のお住まいは関西圏でした。関西の出棺は頭からなのです。急いで説明しました。納得していただきました。お葬式の風習には、関東圏と関西圏で異なる点がいくつもあるのです。


当然、霊柩車に運び入れる際の棺の向きも関東は足から、関西は頭からになります。火葬炉に入れる時も同様です。関東は玄関を出るのは足からと考え、関西はお店の「のれん」をくぐるのは頭からと考えたところから始まったと言われています。


火葬の後の収骨の時も関西から来た親戚が参列している場合は、驚かれる場合があります。関東では火葬の後「全部収骨」と言い火葬炉から出てきたお骨をすべて骨壺に拾います。関西では「部分収骨」と呼ぶ主要なお骨だけを拾い、残りの骨は火葬炉の台車の上に残して帰ることが多いのです。関西の火葬場では、一番初めに本骨(喉仏)の名称が付いている第二頸骨のお骨を拾います。仏様が座禅を組んでいるような形をしています。故人の魂が宿っているお骨と信じられています。残った足、腰、腕、頭蓋骨の部分を胴骨と呼びます。


このように東と西ではお骨を拾う量が違うため、骨壺のサイズも違います。関東では7寸(直径21cm)以上の骨壺を用意します。大腿骨などの大きいお骨は半分に折り、崩れたお骨はフルイにかけてすべて拾い、最後は粉骨を塵取りで集めます。関西は本骨を別の小さな骨壺に収容し、主要なお骨だけを5寸(直径15cm)の骨壺に入るだけ入れ後は置いていきます。


収骨に違いがある理由の一つが、関東では火葬場をお墓と離れた場所に作ったので火葬後に全ての遺骨を拾うようになったと言われています。関西では納骨の場所で火葬が行われる地区が多く、結果お墓が近いので全部のお骨を拾う考えが無くなったようです。又関西では奈良や京都を中心に宗派の総本山が多いため、遺骨を本骨と胴骨に分けて拾い、本骨は宗派の総本山に納めるという風習がありました。本山納骨と呼ばれます。残りの骨は自分のお墓に納めます。関西でお骨をすべて拾わないのはそのような歴史からきたようです。


このほかにも、関東では香典袋の水引は黒白が一般的ですが、関西では黄色と白色の水引の香典袋が使われることがあります。又、花飾りも関東では生花の中でも色花の割合が多く、関西では樒(しきみ)と呼ぶ緑の葉を多く使用します。


お通夜の後の食事も違いがありました。関東ではお通夜が終わった後、通夜振る舞いと呼ばれる食事を参列者全員に振る舞う習慣がありました。コロナ過と家族葬全盛で無くなってしまった風習ですが、オードブルやお寿司などを別室に大皿で用意しました。通夜の参列者は一口でも飲み物や食べ物に手を付けるのがマナーとされていました。多くの人に料理を振る舞う風習が、お葬式のステータスだと関東の人間は考えたのです。関西では参列者はそのまま帰るのが一般的です。お通夜後の食事は家族と親戚のみで行うのが通常です。


地方が違うとお葬式の風習は大きく違います。関西の方が関東のお葬式に参列して驚くことは結構多いのです。

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