おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

喪中はがきが届くこの頃

喪中はがきがポストに入る季節になりました。家族だけで見送る家族葬が多くなり、親戚の死去を一枚のはがきで知る人も多くなりました。本来、喪中はがきとは故人とそれほど深いお付き合いではない方に向けてのお知らせでした。ですが、この頃は親しい人の死去を、このはがきで突然に知るのです。お葬式を家族のみで済ませて、はがき一枚の報告だけが来るのです。突然の文面でショックを受ける方も多いようです。亡くなる前にひと目だけでもお別れをしたかったと悔やみ、今やお骨になった故人に思いをはせるのです。はがきの内容が知人の親の不幸ですと、自分もその年代になったかと思い、これから書く年賀状の宛先リストから削除しようと考えながら家に入ります。


喪中はがきは明治や大正の時代に皇室の大喪に対し国民が年賀欠礼を行っていた習慣から始まりました。昭和に入り年賀状が全国民に普及して、一般家庭の喪中でも年賀欠礼の挨拶状を出す風習となり現在に至りました。


喪中はがきを出す範囲は一般的には、二親等までの親族が亡くなった場合に行います。両親・配偶者・子・兄弟姉妹・配偶者の両親・祖父母・配偶者の祖父母・兄弟姉妹の配偶者・配偶者の兄弟姉妹になります。祖父母の場合は同居していた場合は出すし、そうでない場合は出さないという判断もあります。これ以外の三親等以下には必要ないと思います。


郵便局の通常はがきには、喪中はがき専用の胡蝶蘭柄があります。私製はがきに貼る切手は弔事用63円普通切手花文様を利用してください。喪中はがきを出す時期については年賀欠礼の挨拶であり年内に届けば問題ありません。ただ喪中はがきを受け取った方も年賀状を送らないという風習が確立していますので、先方が年賀状の準備にとりかかる前の11月中旬から遅くとも12月初旬には届くように出すのがマナーとなりました。年末に不幸があった場合は、喪中はがきを出しても、相手に届くのがお正月や年末ぎりぎりになってしまいます。それでも一応喪中はがきを出すという考え方と、出さずにいて松の内が明けてから寒中見舞いのはがきを送るという方法もあります。


我々は喪中はがき受け取ると年賀状を出してはいけないと考えてしまいますが、実際には先方に年賀状を送っても失礼には当りません。このはがきの意味は「年賀の挨拶をお断りします」ではなく「自分は喪中なので年賀の挨拶が出来なくて申し訳ありません」です。


最近の家族葬の一般化により、親しい間柄にも拘わらず故人の死去を年末のはがきで知るケースが増えてきています。しかしはがきを送った喪家様も今更香典を貰うつもりは無く、まして年末に家に来られて手を合わせられるのも出来るなら止めて欲しいと思っています。


それでも、どうしてもお悔やみの気持ちを伝えたいとか、あるいは身内を亡くされて気落ちしているご家族に慰めの言葉をかけたいとの思いを持つ方もおられます。お世話になった故人に哀悼の気持ちを届けたいと願う方は現金の香典ではなく、お返しの心配をさせない品物を考えてください。定番なら、お線香ですがこの頃は喜ばれません。お菓子の詰め合わせとか、仏前に備えるお花のアレンジなどがお勧めです。喪中見舞いの文面には、拝啓や敬具などは不要です。冒頭の挨拶文は年賀状と同様に句読点はつけません。


はがきを頂いたお礼と、貴方からの弔意は、故人に喜ばれご遺族を慰めてくれはずです。

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