死者に捧げる花に囲まれて
百合子 と言う名前の仏様でした。
まだ二十代、なぜこんなに若い方が、棺に入らなければ、ならないのでしょうか。
会葬御礼が始まりました。
「娘が生まれたとき、窓から庭一面に咲いている、ユリの花が見えました。百合子
と名付けました。
娘はユリの花が大好きでした。こんなに沢山の友人達に送ってもらい………」
マイクを持つ、父親の手が悲しみに堪えて震えています。
あちこちから、すすり泣きが、聞こえてきます。
お別れの時がきました。祭壇花を、手折り、棺に入れていきます。
私は、花屋さんとセレモニーアシスタントさんに、そっと囁きました。
「白ユリを、皆さんに渡してあげてね」
通常、お別れ花は出棺時間の都合もあり、祭壇の近くの白菊を、主体に手折り、
喪家様方に手向けてもらいます。今回も白菊中心の祭壇でしたが、ポイントに、
白ユリが、挿してありました。供花のアレンジも、白ユリが多めに入っています。
「出来るだけユリを選んで、渡してあげて」
私の言葉で、セレモニーアシスタントさん達は、手の届きにくい所にある、
ユリの花も、手折って、持ってきてくれました。
実は、死亡届けで名前を確認していた私は、独断で花屋さんに、
「カサブランカや白ユリを、いつもより多めに挿しておいて」
と、発注の時に、お願いしておきました。
お顔から全身にかけて、白ユリで飾られた仏様が出棺します。
まるで、お花畑の、白雪姫のようでした。
棺の蓋を閉めるとき、周りにユリの香りが、フッと漂いました。
仏様のお顔が、一瞬、微笑んだような気が、いたしました。