おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

お布施の額を言わない訳

お葬式を行う喪主様が戸惑われて、なおかつ、解りづらいのがお坊様に支払うお布施です。金額をお寺に直接伺うと、大概は「お気持ちで」との答えが返ってきます。この返答で支払い金額が分かる人は1人もいません。一万円札を一枚入れて「気持ちです」と渡したりしていたら、その後、葬儀屋が呼ばれ喪主にキチンと説明するようにと怒られます。金額に迷ったら葬儀屋に聞いてください。お寺に失礼にならない総額をお伝えします。


ところで、なぜお坊様はお布施の金額を言わないのでしょうか?御経の朗読と言う品物ならば価格が付いていても良いはずです。人件費と見るなら金額を示しても問題ないはずです。ですが、何故か、お坊様は金額を隠したがるのです。そこには大きな理由があります。


仏教の教えでは布施とは「施すとか、気持ちを表す」ことです。僧侶の読経に対して感謝をすることなのです。感謝は目に見えません。目に見えない物は金額にはできません。ましてお寺からも感謝の価格は提示できません。ですからお寺としては「お気持ちで」と答えるのです。感謝という行為には価格が付けられないのです。


もう一つ、はっきりとした理由があります。そして、この答えを聞くと「坊主丸儲け」とつぶやきたくなる気持ちになりかねないのです。お寺は宗教法人です。宗教法人には特典があります。それは税金を支払わないで済むのです。


そもそも税金とは税務署が会社や個人の収入を把握しているから、税金が掛けられて来るのです。通常会社が利益を上げると、その所得に対して税金がかかってきます。これが法人税です。法人税とは利益に対して課税される税金です。しかし宗教活動は一般の企業活動と違い営利を目的に行われるものではありません。利益を追求しない活動だから、課税の対象にしないと決めたのです。宗教法人には、お布施の収入に法人税がかかりませんし、膨大な敷地にかかる固定資産税も免除されています。


なぜ宗教法人は税金を払わないで済むのでしょうか?それは宗教法人から税金を取り始めたら、宗教団体も税金の使い道に対して発言権が生じるからです。政教分離の原則が形骸化され、影響力が強くなってしまことを恐れた政府がお寺を無税にしたのです。固定資産税の徴収をしないのも無収入の寺から税金をとったらつぶれてしまうと考えたからです。


お布施の金額を価格表に提示して事前に決めておくと、収入金額が税務署に判明します。「そんなに貰っているなら」と、利益が出る収益事業と見なされて税金を取られかねないのを恐れるのです。そのため、お寺は絶対に御布施の金額を言わないようにしているのです。


インターネットで調べると昨年のお布施の全国平均は47万3千円と報告されています。1件当たり約50万円は結構な金額です。この金額は読経料・戒名料・お車代・御膳料の総合計です。しかし建前上はあくまでも、個人の寄付であり収益活動とは見なさないのです。


宗教法人には課税されないと言いましたが、書籍販売等の収益事業と認定される活動を行うと生まれた利益には課税されます。又、お坊様を擁護すると、寺から給料を貰う場合は個人に所得税がかかります。


お布施の金額を明確にしないのは税務署対策なのです。お寺様、暴露してごめんなさい。

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