おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

お葬式で思い出す出来事

「49日法要が終わりました」のご連絡を受けると、後祭り祭壇を片付けに喪家宅へ伺います。片付けながらお葬式の思い出のお話しになります。初めてのお葬式ですと何もわからず右往左往して葬儀屋の言われるまま行なう方が多いのですが、それでも家族で決めた内容でお葬式を行った結果「良い思い出になりました」とお話しを始める方も多いのです。


結構話題になるのが、病院から自宅に一旦帰らせることができて良かったと思い出す方が多いことです。最近の家族葬では、自宅に帰らせず病院から葬儀会館の安置室に直行するケースがほとんどです。しかし私は「出来るなら仏様を一度、ご自宅にお連れしてはいかがですか」と家族に促します。「自宅へ帰りたい」と生前願っていた故人も多いはずです。最初は「片付いていないから」「ご近所に内緒にしたいから」「集合住宅だから」と抵抗する方もいますが、結局家族で話し合うと自宅安置に変わることが多いのです。故人が死ぬ迄望んでいた自分の布団に横たわり、家族の傍で過ごす時間は、貴重な思い出になります。


家族が見守る中での納棺式も、良い思い出になったと話される方も多くおられます。家族の手で故人のお顔を綺麗にしたり、持たせる副葬品を選んで入れてあげたり、着せ替えや着替えの衣装を棺桶に入れた時間が、忘れられない思い出になったと皆様おっしゃいます。


お葬式のBGMで故人の好きな音楽を流すことが出来て良かっと話される喪家様も多くいます。葬儀会館の進行でも式の前後の時間や出棺の時などに音楽を流します。従来はクラッシック一辺倒でしたが、リクエストでポップス、ジャズ、演歌などを流したこともあります。ピアノが得意なお孫さんが、自分で弾いた録音を持ってきて、出棺時に流したこともありました。たしかショパンのピアノソナタ第2番変ロ長調第3楽章「葬送」とショパンのノクターン第20番嬰ハ短調「遺作」でした。司会者が「これからかける曲は、CDではなく、お孫さんの演奏です」とアナウンスをしたため、棺にお花を入れる全員の手が止まり、曲に耳を傾けました。「あの時間は良い思い出になりました」と話されていました。


故人の好きな花を飾ることが出来て、良い葬式になったと話される人もいました。葬儀の花というと、一面の白い菊の花を思い浮かべる人が多いのですが、最近は菊だけに限らず故人の好きな花や季節の花で祭壇を飾る人も増えてきました。「花の好きな故人でした」と聞くと「お好きだったお花で飾りませんか」と促すこともあります。お名前が「百合子」と伺い、ユリやカサブランカをたくさん飾り付けたこともありました。近頃はバラやカーネーションなどの洋花も多用します。季節によりヒマワリ、桜の木、チューリップなどを飾り、故人を偲ぶこともありました。どうしても生花はお値段が張ることもありますが、大きくしなくとも棺の周りを囲むだけでも、素敵なお葬式になり思い出に変わるのです。


先日大往生のお婆ちゃんを送った喪家様からは、こんな良い思い出のお話しを伺いました。


亡くなったお婆ちゃんに皆で「ありがとう」のメッセージを書こうと決めたのだが、孫たちが「紙に書いてもお婆ちゃんが読む前に 火で燃えちゃう」と言い始めました。そこで、全員で考え出したのが「棺桶の蓋の裏にマジックで直接書いてしまおう」だったそうです。
「こっそりとお通夜の夜に、棺桶の蓋の裏に、メッセージを全員で書いてしまいました。葬儀屋さん、気がつかなかったでしょう」
「知りませんでした。良いアイデアでしたね。しっかりと伝わり旅立たれましたね」

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