おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

元気な遺影写真を作るぞ

「遺影写真を作る故人のお写真の探していただけますか」と打ち合わせの時に伺います。この頃はスマホのアルバムを開き指先で探し始める場面が多くなりました。少し前までは遺影写真の原板を尋ねると、押し入れの奥から埃臭い厚手のアルバムを引っ張り出して、家族全員で時間をかけて探し始めていたのです。


いざ、お葬式というときに家族が最初に戸惑う出来事が、遺影を作る故人の写真を探し出す作業です。一人で正面を向いて笑顔で写っている顔写真で、なおかつバックが無地な背景など、滅多に見つかりません。やっと見つけたスマホの中の故人も家族や友人と写っていますので、顔の背後に顔が重なっていたり、着ている服に他の人の手や顔が写りこんだりしていて、そのままでは使えない場合が大半です。


現在、修正技術が格段に進んでいますので大概は見た目の良い遺影写真に仕上がりますが、出来るなら着せ替えをせず、自分の服装で自分が気に入った笑顔で、残りたいと願う方が多いのです。終活ブームで生前に自分の遺影を準備しておこうと思う方も多いのですが、いざ撮影しようとなると準備やタイミングに悩むのです。


お気に入りの洋服を着て、それなりのメイクをして、カメラの前で準備をするのは結構大変な作業になります。思い立ったら撮影したほうがいいということがわかっても、いざとなるとタイミングがつかめません。自分の誕生日で、家族がカメラを構える日がチャンスです。70歳の古希、77歳の喜寿、80歳の傘寿などの年祝いのときも良いタイミングです。「遺影のための顔写真」などと言わないで、自然に写真を撮ってもらうことが出来ます。


一度遺影写真を作ったら、作り直すものではないと思っている方もおられますが、遺影はいつでも作り直すことが出来ます。気に入らなければ撮り直しますし、後で気に入った写真が出てきたら差し替えます。一生に一度の機会と張り切らず気楽な気持ちで臨みます。


自分は、まだ元気だから遺影なんて必要がないと思う人が大半です。しかし遺影写真は、なるべく元気な時のお顔が良いのです。後回しにした結果、予期せぬ病気になり、入院して、その後寝たきり介護になります。そこから遺影の準備をしようと思い始めても、やせ細り顔色が悪くなり、認知症で表情が無く、緩んだ顔の遺影になります。


遺影は葬儀の時に使うだけではありません。位牌などと一緒にずっと飾られるものです。家族が折に触れて見つめ、時には語り掛ける対象になります。元気な姿で顔色が良く、しっかりと微笑む貴方の表情を残しておけば、家族は遺影を見るたびに明るい気持ちになれるでしょう。もう一度言います。遺影を作るのは、元気でボケないうちが望ましいのです。


今は長寿の時代です。年配の方であるほど、10歳ほど若い頃の写真を遺影にするのが理想とされています。90歳の人が90歳の姿を残すよりも、80歳の頃の写真を使った方が良いのです。ぜひ今の顔を10年先の遺影として準備しませんか?


大概の方は遺影をとるぞと意気込むとカメラの前で緊張します。柔らかな表情を撮るコツがあります。小さなお孫さんがいる人は、お孫さんと一緒に写真を撮ることです。しかし上半身を使用するのでお孫さんを抱き上げるのは避けてください。お孫さんのかわりに可愛がっているペットと一緒に撮影しても、幸せな表情の素敵な遺影写真が撮れるはずです。

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