おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

春分の日にはお墓参りを

春分の日は国立天文台が決めています。年によって3月20日でしたり21日になります。太陽が黄道上の春分点を通過した日なのです。地球が太陽の周りを公転する周期は丁度365日ではなく365日と6時間程かかります。ですから地球の動きで春分の日が変わるのです。


春分の日は昼と夜の長さが全く同じになる日です。この時、太陽は真東から昇り真西に沈みます。算数で習ったように、二つの点を一直線に結ぶと、距離は一番短くなります。
西方浄土と言う言葉があります。仏教では亡くなった人々が住む彼岸(ひがん)と呼ばれる、あの世は真西にあると説いています。我々が此岸(しがん)と呼ぶこの世は真東にあります。春分の日は彼岸と此岸とが一直線に結ばれます。そのため「春分の日はあの世とこの世がつながる日」になりました。


ご先祖や亡くなった親と交流が出来る日が春分の日なのです。仏教の各宗派ではこの時期に春季彼岸会(しゅんきひがんえ)と呼ばれるお彼岸の法要が開かれます。菩提寺をお持ちの喪家様には彼岸会(ひがんえ)と呼ばれる法要の案内が届きます。「お彼岸」という言葉が生まれ、この日にお墓参りや仏壇にお供えをしてご先祖供養をするようになった理由は、この世とあの世が一番近くなると考えたためです。


海外では亡くなった日にお墓参りをする習慣がある様ですが、命日でもない、春分の日や秋分の日の「お彼岸」に先祖供養をする習慣があるのは日本だけです。太陽の動きから、あの世とこの世の距離を考え出し、お互いの位置が一番短くなる日を見つけて、お墓参りなどの先祖供養をする習慣を、我々日本人は編み出しました。


春彼岸で定番のお供え物といえば、「ボタ餅」です。春彼岸はボタ餅、秋彼岸はおはぎになります。ボタ餅とおはぎの違いをご存じでしょうか?ボタ餅はこし餡で、おはぎはツブ餡で作ります。秋に収穫される小豆は、春になると皮が固くなって食べづらいので、ボタ餅にはこし餡を使うのです。お彼岸にボタ餅やおはぎをお供えするのは、赤い色をした小豆は魔除けになると考えられていたためです。ご先祖に悪霊が寄り付かないように、もち米を蒸して丸め、赤い小豆から作った餡子(あんこ)で包んだ和菓子を作りだしました。


昔から日本人は「ご先祖様への感謝」とか「自分が生かされている感謝」という価値観があります。春分の日は、お墓参りか仏壇に手を合わせ、ご先祖供養をしてみませんか?


「私が今この世に生を受けているのは、お母さんとお父さんとご先祖のおかげです。おかげさまで、なんとか幸せに過ごしています。世の中、コロナだとか戦争だとか、恐ろしい話題で持ちきりです。これからも災難や不幸な事が起きないように、あの世から見守ってください」


暑さ寒さも彼岸までという言葉があります。春分の日や秋分の日を境に季節が変わり、寒さや暑さが和らぎ過ごしやすくなります。


あの世とこの世が一番近くなる「春分の日」の今日は、ご先祖に感謝する日なのです。

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