おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

葬儀屋に就職したい学生

高校生が5人見学に来ました。いろいろな仕事を知ろうと言う教科の一環で葬儀業界に興味を持ったグループと紹介されました。将来就職したい会社の中でもサービス業界は人気のある企業だそうです。確かにこの葬儀という仕事は究極のサービス業とも言われます。


日本の死亡者数は年々増加傾向です。高齢化社会でこれからも増え続けます。死亡者の増加と葬儀社の売り上げは直結するため、今後も葬儀業界は安定的に成長する企業です。


高齢化が急速に進んでいく日本ですが、以前に比べ葬儀というイベントにお金をかけないという考え方になりました。家族葬と言う言葉が生まれ、一件あたりの葬儀単価がとても低くなりました。今後さらに内容の簡素化と総価格が下がると予想されます。家内工業的な葬儀屋は淘汰されます。葬儀会館等の設備の整った葬儀屋が残る業界です。年収は格差があります。会社の規模や業務によって収入は変わります。就職活動の前に情報を得ることも必要です。


葬儀の仕事は一般の方には解りません。最初にご依頼を受けると、ご遺体の搬送を行います。死体を触る仕事です。中にはトラウマになりそうな、崩れた身体を目の当たりにすることもあります。ご遺体を綺麗にするのは自分しかいない、との覚悟を持って取り掛かることも必要です。お布団に安置し、ご遺族の相談に乗りながら葬儀見積もりを作成します。生花飾りを含む祭壇準備を行い、湯灌、エンバーミング、納棺等を行い、通夜式、葬儀式に臨みます。司会やスタッフとで式進行するにあたっては、事務的にスケジュールを進めるのではなく、ご遺族の心に寄り添う心配りが必要です。悲しみと心労と疲労が重なるご遺族にとって、頼られる存在にならなければなりません。葬儀のことだけではなく、宗教の知識や地元の風習、来客の対応や香典返しについてなど、幅広い知識が必要です。それを柔軟に、かつ適切に使いこなすためには相当な勉強が要求されます。


一つの葬儀を行うには、僧侶、セレモニーアシスタント、霊柩車を含む車の関係者、火葬場職員、生花店、仕出し料理屋、仏具店、墓石業などが関わります。お葬式はさまざま職種の人達によって成り立っています。それらすべてをとりまとめるのも仕事になります。


お葬式が終わり、集金を済ませばそこでお付き合いが終わるというわけではありません。初七日の法要、納骨、場合によっては一周忌を含む以降の法要の相談に乗ることもあります。長くお付き合いが続くだけに「この人にだったら任せられる」と思ってもらえるような信頼関係を築く仕事が求められます。


御依頼の電話は深夜にかかります。夜勤や夜間の呼び出し、休日も緊急対応が求められることもあります。ショックを受けているご遺族には気配りも必要です。会葬者のハプニングも多くあります。そのような意味では体力と気力がとても必要な業界だと感じています。


決められた日数の中で全てを執り行う責任があります。失敗の出来ない仕事です。計画性とそれを実行できる実力と、ご遺族に適切なアドバイスをする能力が必要です。


喪家様からの「ありがとう」の感謝を素直に受け入れられ、自分のエネルギーに変えられる人が業界に向いていると思います。葬儀業界は大変ですが、やりがいのある業界です。


一生懸命にメモを取り丁寧にお礼を言い帰っていく後姿に、エールを送る私がいました。

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