おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

後を追ったペット

先月にご葬儀を終えた喪家宅に、後祭り祭壇の引き上げにうかがいました。
 
火葬場から持ち帰ったお骨と、白木位牌を飾って置き、満中陰まで置いておく
祭壇を、後祭壇とか、後飾壇と言います。 関西地方では中陰壇とも言います。


満中陰とは、亡くなった日から、7日ごとに7人のお釈迦様や菩薩様に会い
教えを受けて、7×7 の、49日目の極楽浄土に行ける日です。


それまでに、白木の位牌を仏壇に収める塗りの位牌に変え、満中陰の法要を行い、
納骨の準備をします。


引き上げようとした後祭り祭壇に、故人のお骨の入った大きな骨壺が、
まだ置いてあります。その横にひと回り小さい骨壺が並んで置いてあります。


喪主さんが話し始めました。


「葬儀屋さん、この小さいほうは、可愛がっていた犬の骨なのです。一緒に埋葬して
 あげようと、今、墓地か納骨堂を探しているんですよ。」


     「ワンちゃんも亡くなったのですか。それは、残念でしたね」


「故人がとても可愛がっていまして、亡くなったのが分かったのか、
 お葬式の日から元気がなくなってきて、その夜に死んじゃったのです。」


     「ペットも主人が居なくなった事が解ると聞いています」


亡くなった方が可愛がっていたペットが、故人の死を理解しているという、
お話はよく聞きます。


納棺の時に、そばに来て顔を舐めたとか、
自宅から葬儀場に行く準備をしているときに、一緒に連れて行けとうるさく吠えたとか、出棺のときに、今まで一度も聞いたことのない遠吠えを急にし始めたとか、


悲しみを感じるのはペットも人間と同じだと思います。


玄関まで送ってくれた喪主様が、青空を見上げました。


「あの雲の形」


犬を連れて歩いているような人のかたちに見える雲が、浮かんでいました。


「今頃、天国で、いつものように、散歩しているのかしら」


どこかで犬の鳴き声が聞こえました。

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