おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

葬儀の後は相続問題です

お葬式が終わると皆さんがよく話題にするのが相続の問題です。銀行の窓口で亡くなったから故人の預金を引き出したいと言ったとたん、その預金は凍結されて一切出し入れが出来なくなった話をされます。当然電気ガス水道等の光熱費や携帯代金などの引き落としも不可能になりますので、そのままにして置くと電気、ガスが止められ携帯が繋がらなくなり、暮らせない事態に陥ります。相続手続きが必要です。これが結構面倒な手続きになります。話し始めると長くなるのでご勘弁ください。


相続で一番大きな問題は土地と家の引継ぎでしょう。過去に相続問題で理不尽を感じた例がありました。夫を早くに亡くした奥様でした。子供はいません。その夫の義理の父、そして義理の母の介護を長年続け、先に義理の母を送り、その後数年して義理の父も送って、やっと介護が終わりました。家族で同居した家で、ゆっくりと余生を過ごしたいと思っていた願いは、かなえられたのでしょうか? 


答えは、相続権のある弟から「この家を売るから出てってくれ」と言われ、長年面倒を見た奥様は、無一文で放り出されました。早くに亡くなった夫に、土地や家の名義の一部でも分けてあれば、相続で住み続けることが可能な場合もありましたが、このケースは、無くなった義理の父が100パーセント持分で、その弟に相続権があり、長年世話をした嫁には、一銭もいかないのです。相続権は血のつながった血縁で受け継がれ、婚姻関係でできた姻族には 配偶者以外は権利が発生しません。


この話を聞かされた時はずいぶん理不尽な法律だと憤慨しましたが、やはり専門の法律家もそのように思ったらしく19年に40年ぶりに相続法が改正されました。内容は配偶者居住権を創設、そして被相続人の介護や看病で貢献した親族は金銭要求が可能になるとのこと。もう少し法律が早く施行されていれば、介護や看取りを一人で頑張っていた奥様が家を追い出された時の悲しい顔を見ずに済んだはずです。


相続の問題は土地、家、お金の問題でもあり、兄弟、叔父や叔母の親戚、そして、それぞれの配偶者の思いと欲が複雑に絡むので、骨肉争うトラブルとなります。


相続の流れは被相続人(故人)の財産を調べることから始まります。預貯金や不動産などのプラスの財産から、借金などのマイナスのものまですべてリストにします。財産の中に相続したくないマイナスの財産(借金)がある場合、相続開始から3か月以内に相続放棄もしくは限定承認を宣言することができます。ですが3か月以内に家庭裁判所に申請しないと相続放棄や限定承認は出来なくなるので、財産リストを作成した段階で相続をするのかどうかを決めるようにします。


土地、家そして預金等をたくさん相続した場合は、当然相続税の申告が必要です。相続の純資産額が基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるようでしたら10か月以内に相続税の申告を行う必要があります。忙しいなどの理由で期限を過ぎると、加算税や延滞税が課せられることがあるので注意してください。


葬儀後から始まる遺産相続は手続きも多く面倒なものです。相続の相談事も多く受けるのですが、個人的には、相続の問題はあまり深入りしたくないのが本音です。

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