おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

自宅で葬儀をしませんか

お葬式は葬儀会館で行ないますと、ほとんどの人が言われます。ひと昔前は、自宅でお葬式をしました。住み家がマンションに変わり、一軒家であっても、部屋の作りや玄関からの導線が、棺桶を入れて参列者が集うお葬式の会場には出来ない構造になり、結果として、現在は大部分のお葬式が葬儀会館で行なわれるようになりました。


しかし少しずつですが、住み慣れた自宅でのお葬式を希望なさる方も出てきています。送る側も自宅から出棺させたいと願う家族が増えてきているのです。自宅でお葬式を行う家族には共通点があります。故人に親戚や知人も少なくなり参列者があまりいないとか、介護病院に入院中、自宅に帰りたいと強く希望していたなどです。


葬儀屋やお寺のお坊さん主導の形式的なお葬式に疑問を抱く方も多くなりつつあります。葬儀会館ですと時間制限などの制約もあります。そして、どうしても豪華な祭壇や過剰な飾り花の装飾も多くなります。経済的な考えから自宅を選び、家族を中心にしたお葬式にしたいと、考える皆様も多くなってきているのです。


自宅での家族葬を行う場合に一番の問題になるのは、ご近所への対応です。急に寝台車や霊柩車が家の前に横づけになり、葬儀屋が数人ウロウロと出入りをし始めるのですから、内緒にしておくことは出来ません。ですから、ご近所から「亡くなったのかしら」と疑問を持たれる前に、ご挨拶を済ませておくのです。


「〇〇が逝去いたしました。生前中は大変お世話になりました。故人の望みで家族だけで送りたいと希望しております。準備等でご迷惑をおかけしますがお許しください。落ち着きましたらご挨拶に伺います。これからもよろしくお願いいたします」
このように最初にご近所の了解をとると、スムーズに自宅での儀式が進みます。


それでも「お世話になったので、一目お顔を」と弔問の方も出てきます。お香典も持ってくる場合もあります。「故人の遺志でご香典やご供花は辞退します」とむげに断らず、一旦は受け取り後で返礼品を届ける心遣いなどで良いと思います。立場が変わって貴方がご近所の場合「家族葬で行ないます」と伝えられたら、訪問は遠慮して、霊柩車の出棺準備に気がついたら見送りに出るぐらいで良いと思います。


望み通り自宅でお葬式を行いたいが、祭壇や棺桶を設営するスペースが取れないと言われる場合もありますが、葬儀屋に相談していただければ、ほとんど解決できます。出来るだけ家具の移動等は避けますが、どうしても棺桶の安置が不可能な場合は、設置のため葬儀終了まで一部の家具を葬儀社で預かったこともあります。


自宅葬で一番気を使う瞬間が自宅の玄関から棺を出棺させる時です。近頃のお家は玄関がとても狭く、又続く廊下が直角に曲がっているご家庭が多いのです。棺を運び入れる時は縦にすることも可能ですが、ご遺体を納めた後の棺は無理が出来ません。どうしても少し斜めしないと出せない場合は、お棺の中にパッキン等で詰め物をして、ずれないように手当したこともあります。玄関から出すことが不可能な場合は、やむなく縁側や窓から出棺したこともありました。


誠実な葬儀屋なら自宅の間取りや人数に合わせて最善の方法を考えますから、故人が自宅での葬儀を希望していたら、望み通りの自宅葬にしてみませんか。

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