なぜ死んでいくのだろう
毎日のように、人の死と向き合っていると、単純な疑問が湧きあがってきます。人は何故死んでいくのだろうと言う質問です。お葬式の現場では、よく「寿命だから」と言われます。医学や科学の進歩で寿命は止められないのでしょうか?厚生労働省の発表によると2019年の日本人の平均寿命は男性が81.41歳女性が87.45歳です。
人間が生まれてから死ぬまでの時間のことを寿命といいます。この長さは個人差があります。生まれてすぐ死ぬ人もいれば、100年以上生きる人間もいます。ですが災害や事故、そして病気で、あまりにも短い場合は寿命とは言いません。人間は、老人になって衰えて死ぬものだとの考えから、老衰で死ぬことを寿命と言うのです。
平均寿命は文明の発達とともに延びました。古代ギリシャでは19歳だったのです。ヨーロッパでも16世紀に21歳、19世紀に26歳でした。20世紀初めに45~50歳と延び、その後日本を含め先進諸国で平均寿命が飛躍的に延長しました。医学の進歩と食べ物等が改善されたからです。しかしその後寿命はあまり伸びていません。
少し難しい話になりますが、私達の身体を構成している細胞には限界があることが判っています。古い細胞が淘汰され、新しい細胞が作られることで、人間は生き続けています。しかしこの個々の細胞の分裂には一定の回数があることが判明しました。正常な体細胞でも決められた以上の分裂が不可能なのです。細胞分裂時に染色体上のテロメアと呼ばれる配列が徐々に短くなり、これ以上テロメアが短くなれば分裂できないことで最期を迎えます。これをヘイフリック限界といい、ヒトの細胞の分裂限界は数値50で、最大寿命は約120年と判明しています。あくまでもこの数値は正常に分裂が行なわれた場合であり、大半の人間は、途中でコピーミスが起きて、癌になったり、身体が不調となったりしていき、120歳前に寿命を迎えます。
もう一つ、人間を含む脊椎動物の寿命は、心拍数によって決まるという説もあります。心拍数には上限があり哺乳類は20億回で、それに達すると死ぬのです。ただ、この値は疑いもあります。人間の一分間の脈拍は60から80回程度です。この説に当てはめると45歳から65歳程度の寿命になってしまいます。
野生の動物の多くは、生殖能力を失うころから体力が衰えていき、感染を受けやすく、捕食者の攻撃も受けて寿命を迎えます。人間の寿命は哺乳類のなかで最長です。それでも、生殖活動が行なえない年齢になると、なるべく早く死に向かおうと言う遺伝情報が我々の身体には流れていると言う説もあります。人間が頂点に立つ進化の歴史は、過去に次々と古い個体が死んでいくから、維持されてきたのです。
平均寿命は先進国の方が開発途上国より長くなります。これは発展途上国の新生児死亡率が高いことが原因です。途上国の老人が早く死ぬと誤解しないでください。
WHOの世界保健報告発表による。国別平均寿命ランキングでは平均寿命が80歳以上の国は31か国あり平均寿命が長い順に日本、スイス、韓国、シンガポール、スペイン、キプロス、オーストラリア、イタリアと並んでいます。
皆さん、この国の平均寿命は84.3歳で世界一の国なのですよ。