おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

夫婦位牌は円満夫婦の証

お葬式の時にお坊様が持ってきて祭壇に安置するのが、白木位牌という削った木片で出来た仮のお位牌です。この位牌を四十九日までに仏壇に納める漆塗りの本位牌に変えます。四十九日法要が終わると白木位牌はお寺が持ち帰りお焚き上げします。


位牌は故人の依代(よりしろ)として供養の対象とする大切な存在です。位牌には死者の霊を祀るため戒名や法名を記し仏壇に安置します。礼拝の対象として線香やローソクを灯し、水や供物をそなえて挨拶や読経で供養するのが慣習となっています。


奥様に先立たれたお爺ちゃんが静かに息を引き取りました。配偶者を亡くされた時はショックで「すぐに追いかけたいと」言い出すほどの愛妻家でした。それでも周りからの応援で孫との時間を大切にする生活に戻りました。お孫さんの趣味は鉄道でした。カメラ片手にお孫さんと日本全国を飛び回り、「極楽で妻に会って話してやるのだ」が口癖でした。少し痴呆が入ってきた晩年も「お母さんに会いたい」が口を出ていました。最期の言葉も「おまえ、待っていてくれ」と聞こえたそうです。


お葬式が終わった時に喪主のご長男から、「葬儀屋さん、うちの両親は円満夫婦だったと思います。二人が寄り添える方法が何かありませんか」と相談されました。


「それではご位牌を夫婦位牌(めおといはい)に作り替えましょう」


夫婦のお位牌を一本にすることでご夫婦が極楽浄土でも仲睦まじくいられる印象を与えることが出来ます。通常仏壇に納める本位牌は、位牌一基に対し故人一名の戒名が刻まれています。一基に一名が基本ですが、お二人とも故人となったご夫婦をお祀りする際に、ご夫婦連名の夫婦位牌に作り替えるのです。夫婦位牌は一名用の札板に比べ少し幅の広い札板が用います。表裏どちらも向かって右側に男性の戒名を、左側に女性の戒名を入れるのが一般的です。今回亡くなった方の白木位牌を、先に亡くなった配偶者の位牌と共に業者に託して夫婦位牌にしてもらいます。夫婦位牌は、夫婦の絆を重視するという残された家族の思い間から作られることが多いのと、仏壇の中の位牌を安置するスペースの整理にも役立ちます。


この頃増えてきたお坊様を呼ばないお葬式で戒名がなくとも、俗名の配置で〇〇之霊位と記入したご両親のお位牌を作られたご家族もおられました。霊位と入れる事で戒名を授かる事と同じ意味になると言われています。自分を生んでくれたご両親を大事にするご家族と感じました。


位牌という一枚の板ですが、今の自分が生きているのは、この両親のおかげだと気づかされます。
来世でも寄り添い過ごしてほしいと言う願いを夫婦位牌がかなえてくれるのです。


出来上がった夫婦位牌をお届けに上がりました。お葬式の時はお一人で写っていた遺影写真が、作成の時から変わっていてビックリしました。
少し若い頃のお写真でしたが、ご夫婦がよりそい微笑んでいます。一枚の黒枠の額縁の中が、お二人の写真になっていました。

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