おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

死ぬのが怖いと言う人へ

いつか自分は必ず死ぬ、と知っているのは、人間だけだそうです。犬や猫などや、牛や豚などの家畜等は死を意識しないと学者は言っています。彼らは毎日を生きていて、病気になったり食べられたりで死ぬことは最期まで解らず、死にかけている最中も、なにが起きているか理解できないと解説しています。


死を意識し、なんとか死に抗おうと努力するのは人間だけです。普段、我々は自分が死ぬということに目を背けています。しかし、いつかは確実に死ぬと解っています。皆様は自分が死んでいく状況について考えてみたことはありますか?


死を恐怖と感じる理由は、死んでいく身体がどうなるかわからないという不安から生まれています。死ぬまでが苦しくて痛そうだと考える人が大部分なのです。人の死に方には、いろいろとあります。ほとんどの方の最期は、高齢になり看取り専門病院に入院し、そこで死を迎えるのが現状です。そのような高齢者が多く入院する病院では、毎日のように患者さんが亡くなります。葬儀屋と顔見知りの看護師さんが話してくれました。寿命を迎えた患者さんが死んでいく理由の第一は臓器不全だそうです。つまり身体の内臓が機能しなくなり死んでいくのです。


腎臓の機能不全は尿が出なくなり全身がむくみます。不要物の排泄できなくなると意識障害と不整脈を起こします。肝臓の機能不全は出血が続き、止血が難しくなります。肺の機能不全は呼吸で行われる体内のガス交換が出来なくなり、死に直結します。死亡診断書を何枚も見てきました。高齢者が病院で亡くなる第一位が肺炎です。どうやらほとんどの方の死を迎える状況は呼吸不全なのだと解ってきました。


肺炎で死ぬ理由は低酸素血症が起こるからです。我々は空気中からの酸素と身体内で出来た二酸化炭素をガス交換しながら生きて言います。血中の酸素はパルスオキシメーターと呼ばれる爪の色を見る器械で測ります。動脈血の赤色の度合いを測るのです。血液中のヘモグロビンは酸素と結びつくと鮮やかな赤色に発色します。


酸素飽和度(酸素に結びついたヘモグロビンの比率)をサチュレーションと呼びます。健常人では96~99%が基準値です。数値が90%を切ると呼吸不全と定義します。


こうなると脳の酸素欠乏で意識不明になります。その後、痙攣、血圧下降、徐脈などが現れます。意識反応が少なくなってくると危篤です。脈拍の緊張が弱くなり、血圧が低下し始め、四肢が冷感して、冷汗が出現し、顔面にチアノーゼが出現します。唾液や分泌物が咽頭に貯留し呼気時にゴロ音が出現し、口が開く下顎呼吸が始まると、間もなく臨終です。


医療関係者と介護関係者の次に死の状況を間近に見るのが葬儀屋です。その葬儀屋が、死が怖い貴方にアドバイスします。貴方の最期は肺炎からくる呼吸不全です。身体の酸素が足りずに意識不明になります。これは深い眠りの状況と同じです。


ほとんどの方の最後は、こうなります。いかかですか?死んでいく身体の状況が解り、少しは死の恐怖が薄れましたか?

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