お坊様のチーンを真似る
お盆のお勤めで、お坊様が自宅に来られて御経を読む時に、傍らで音を出しているのが鐘(かね)と木魚(もくぎょ)です。鐘は合図を知らせる鳴り物として、木魚は御経を読むリズムを整える道具として使われる代表的な仏具です。
鐘はお家に置いてある方も多いと思います。お仏壇に置いている、丸いお椀のような形をしている鐘の名前はお鈴(おりん)と言います。材質は大抵が真鍮製ですが、中には財産隠しの金製もあります。
真鍮製は購入時に光り輝いていますが、だんだん色が悪くなってきます。たまにはピカールかお酢で磨いてください。お鈴は座布団のような鈴台に載っており、横には鈴棒(りんぼう)と呼ぶ叩く棒があります。
お坊様が鳴らす鈴の音は、いつまでも余韻を持ったチーンと聞こえます。どうやら我々の出す音とずいぶん違うようです。このチーンと鳴らす仏具のたたき方を、ほとんどの方が間違えています。お鈴の淵の部分に上からたたいてはいけません。お鈴を鳴らすときは、上から叩くのではなく、真横から叩くのが正式な作法です。
鈴棒を親指と人差指で挟んで、軽くお鈴の上の縁を振るように叩くと、チーンといい音がします。そして余韻がいつまでも続くのです。チーンとならす回数は特に決まっていません。1回でも2回でもかまいません。「これからお参りします」と念じて仏様に気持ちが届くようにチーンと鳴らしましょう。チーンの意味は挨拶でもあります。学校や会社に出かける時に、鈴を鳴らして手を合わせ「おはようございます、今日も行ってきます」と声をかける事で、その日の無事を先祖にお願いします。外出や帰宅した時の挨拶だけではありません。仏壇にご飯を供える時や、お彼岸やお盆にお供えをする時などにも、チーンと叩いて「今からお供えをしますので、どうか召し上がってください」と念じながら手を合わせます。
同じ鐘でも寺院用や葬儀会館で使う鐘は大きさも、色も違います。材質は青銅です。ブロンズとも呼ばれます。この鐘の名称は磬子(けいす)と言い、お鈴と違って色も黒く周りに漆を塗っており縁も厚くなっています。たたく棒は撥(ばち)と言います。
この磬子の場合、叩くとチーンという可愛い音でなく、ゴーンと低い音が長く続きます。御経の読み始めの合図や読経の最後に連続して鳴らします。
お寺の廊下に下がっている鐘は半鐘(はんしょう)といいます。食事の合図に使われます。昔は火の見やぐらに下げておき、火事を知らせる道具にもなりました。
大晦日に百八つ鳴らす除夜の鐘の正式名称は梵鐘(ぼんしょう)といいます。一番良い音が出るスポットがあり、叩き手の上手なお坊様は、そこを狙い撞木(しゅもく)と言うたたき棒でピタリと当て、遠くまで響く音を出します。
余韻を響かせる、様々な鐘の音は、日本人の魂に訴えかける音色があるように思えます。
今日から、仏壇のお鈴は、真横からチーンと叩いてくださいね。