おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

ノートの最初のページに

お葬式の打合せが始まりました。テーブルの上に故人が記入したエンディングノートが出されています。「葬儀屋さん、最初のページを見てください」喪主を務める息子さんが口を開きました。「失礼します」と手に取ります。めくったページには大きな字で「お葬式は〇〇葬儀社で行なう」と記入されていました。


終活ブームが起きてから、エンディングノートを記入する方が増えてきたようです。
自分が亡くなる前にしっかりと準備をして、残された家族が困ることの無いようにと、気を配る高齢者が増えてきたのです。


しかし、実際に書いてみようと思っても、何から書くか、どのように書くか、また市販の記入事項が印刷されているノートでも、あまり細かく書くことで躊躇する方も多く、結局中途半端になってしまい、棚に並べて置くだけの人も多いようです。


エンディングノートのメリットには、自分の思いやメッセージそして自分史を書くことで、家族も知らなかったことや残された家族への愛情を示すことが出来ます。


家族の負担を減らせる介護の希望や延命措置のこと、葬儀や費用の捻出方法などが明記されていれば、本人の判断力が衰えた時や意思表示が出来ない時も、家族が迷うことなく物事が進みます。そして家族の辛い気持ちも和らげることが出来ます。


自分の経済状況や資産を正確に記入しておくことで、現在の生き方を把握し、人生の終末期をどのように過ごすかを考え、準備することが出来ます。また不動産や貯金等を明確にすることで、相続のトラブルを避けることも出来るのです。


年金証書や保険の証書、介護保険証や健康保険証、通帳、印鑑、貴重品などの保管場所などを書いておけば家族が対応しやすくなります。SNSやブログなどのデジタル情報はIDやパスワードがわからないと永久に残ってしまいます。アドレスやパスワード、退会手続きなどの操作方法もノートに記しておくと綺麗に旅立てます。


最初のページに記入されていた〇〇葬儀社とは当然、弊社のことです。選んだ理由も記入されていました。「友達のお葬式が、とても素敵でした。私もあのように送って欲しいから」このページの後には何も記入されていない白紙の状態でした。


「ありがとうございます。誠心誠意、お手伝いさせていだきます」


納棺の時に「このノートも入れて」と渡されました。「〇〇葬儀社で行なう」と書かれた下に小さく「ありがとうございました」と書き添えて、私の名刺を貼り付けました。ノートをお棺の手元にそっと置き声をかけました。


「あなたのエンディングノートのページのおかげで、私共とのご縁が繋がりました。いつの日か、極楽でお会いできたときに、改めて御礼と感謝を申し上げます。ありがとうございました」


優しいお顔が、少し微笑んだように感じました。

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